彼氏がふたり
男が私が触った部位を手で振り払う仕草を見せるから、ある疑問が生まれる。
ちょっと腕組んだだけで気色悪いとか、鳥肌とか、もしかしてこの人──…
「おい君たち、何をやってんだ!?」
背後から聞こえた声に振り向けば、お巡りさんが立っていた。
騒ぎで通報されたのか、悪いことはしてないけどここで補導なんかされたらまずい。
「その制服、南高のだな」
しまった。私、制服じゃん。
ゆっくりと詰め寄る警察官に、頭が真っ白になる。
「……ちっ、走るぞ」
「え、ええぇっ!?」
次の瞬間、八巻が私の腕を持って警察官と逆の方向に走り出した。
後ろから「待ちなさいっ」と叫び声が聞こえる。人混みをかき分けて、こいつに引きずられるようにお店の隙間の細い路地を通り抜けていった。
途中で八巻が足を止めて「しっ…、」と静かにするよう口元に人差し指を当ててジェスチャーを見せる。
「こっちに逃げたと思ったんだけどなぁ」
すぐ近くでさっきの警官の声が聞こえるから、八巻が腕の中に私を寄せて身体を丸め身を潜めた。
ドクン、ドクン──。
お互いの心臓の音がやけに大きく耳に響いて、その場に緊張が走る。