彼氏がふたり
私、何もしてないのになんで睨まれなきゃならないわけ?凄いムカつくんだけど。
次のタイミングで、唯斗くんが教室に入ってきてクラスの女子達が彼に群がっていく。
いつもなら、鞄置いたら八巻のところに来て2人でいるのに。
他人なんて、少し人と違うだけで面白がるんだ。相手の気持ちなんてお構いなしに好奇な目を向けて、自分の小さな世界に面白おかしく吊し上げる。
──美麻、もう一緒にいられないんだ
──普通じゃなくてごめんね
平気なフリしてどれだけ傷付いているか、想像してみろよ。
「壮真ぁ、昨日はバイトのあと駅まで送ってくれてありがとう」
「……は?」
「でもー、暗くて人気の無いとこで急にギュッてしてくるんだもん。ドキドキしちゃった」
なんて、わざと皆に聞こえるように猫撫で声をあげて、八巻のシャツの裾をキュッと手で掴むと。コイツの切れ長の目が見開いて口がポカンとアホ面になった。
「壮真は私とつき合ってるの内緒にしたいって言ってたけど。変な噂流れたら私がやだし」
「……いや、」
「ねぇ、今日さぁ壮真の家で続きしよ?」
夏休みまであと1週間。
不本意だけど、ニセモノの彼氏ができました。