この『恋』の言い換えをするならば『瑕疵』(かし)です

お兄ちゃんは勝手にあがって
ソファーに座った



「お兄ちゃん、なんか用なの?」



さっき電話してたよね?

用があるなら電話で言ってよ



「お土産持って来た」



「あー、うん…ありがと」



「暑かったー…」



お兄ちゃんがソファーで
クーラーの風を浴びながら言った



外まだ暑いんだ

わざわざ来なくてもいいのに…



「お土産なに?
悪くなる物だったの?」



「いや…
食べ物じゃないから…」



「じゃあいつでもいいじゃん」



「うん…そーなんだけど…
瑛茉、退屈してるかな…って…」



「別に退屈なんて…
いろいろやることあるって言ったじゃん」



お兄ちゃんはきっと
私を心配して来てくれた



その優しさ…辛い



「普通に元気そうでよかった」



お兄ちゃん
私のフラれた顔見に来たんでしょ



「うん
普通に元気だよ」



何も変わらない



先輩と別れたけど
何も変わらない気がする

普通、彼氏と別れたらさ
もっと気持ちが沈んだりするのかな…



前に別れた時も
気持ちは沈まなかった



あー…やっぱりダメだった…って
なんとなくわかってたみたいな



「瑛茉、夕飯なんか作ってよ」



「え?食べて行くの?」



「せっかく来たし…」



「せっかく来たけど何もないよ
さっき帰って来たばっかりだし…」



何も変わらない



私とお兄ちゃんも
何も変わらない



「じゃあ飲み物ぐらい…」



「ない」



< 113 / 149 >

この作品をシェア

pagetop