この『恋』の言い換えをするならば『瑕疵』(かし)です

「瑛茉おかえり
オマエの好きなさくらんぼ買ってきたよ
冷蔵庫入れといた」



家に帰ったら
噂のお兄ちゃんがリビングにいた



「あ…漸ちゃん
帰ってたんだ」



「せっかくオマエの大好物
お土産にして帰ってきたのに
妹、素っ気なさすぎ」



そんなことない

さくらんぼもお兄ちゃんも嬉しいよ



「ありがとう
漸ちゃんも一緒に食べる?
あ、漸ちゃん
さくらんぼ好きじゃなかったんだっけ?」



「オマエわざと言ってる?」



私の大好物のさくらんぼ
お兄ちゃんは好きじゃないから
小さい時からいつも私にくれた


私の嫌いなシイタケは
いつもお兄ちゃんが食べてくれた



「私達って好み合わないよね
ホントに兄妹なのかな?
お兄ちゃんは何でもできるのに私は…」



「なにが?
高校だって同じ高校だし
小学校のマラソン大会だって
オレは1位とったことないけど
瑛茉は5年生の時1位だったじゃん
スゲー羨ましかったけど」



「女子の部の1位ね
漸ちゃんのタイムには負けてるもん」



「それはオレは男だし
オマエは女だから仕方ないよ」



「なんで私、女なのかな?
なんで漸ちゃんは男なのかな?」



「オレが女で
オマエが男だったらよかった?」



「ん?
それも違うな…
なんで、私達、兄妹なんだろうね」



「んー…
それはオレも考えたことあるかも…」



「え…?」



「そんなこと考えてるヒマがあったら
勉強しろ
考えたって仕方ない
オマエ、受験生だろ
大学行くの?」



お兄ちゃんはよく
こーゆーふうにお兄ちゃんぽいことを言う



「漸ちゃんと同じ大学行こうかな
そしたら漸ちゃんと同じアパートから
一緒に通えるよね!」



「それはオススメしない」



「なんで?
私バカだから?
これから死ぬほど頑張っても無理かな?
やっぱり漸ちゃんには敵わないんだ」



「成績は充分足りてるよ
お母さんから聞いた
この前の模試、うちの大学B判定だったんだろ」



「あ…うん…」



ずっとD判定だったけど
3年になって最初の模試でやっとB判定になった



「うちの大学、そんな楽しくないし
この家から瑛茉が出たら
みんな寂しがるだろ」



せっかく頑張ったのに…



「なんで…
なんで?
漸ちゃんばっかり独り暮らしとかズルい!」



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