この『恋』の言い換えをするならば『瑕疵』(かし)です

テーブルはお兄ちゃんの好物で埋め尽くされた



「こんな食えないし…
明日からもしばらくいるんだけど」



ちなみに
いつぐらいまでいるの?


今まで
夏休みなんてそんな帰って来てなかったじゃん


ホントに彼女いないんだ



「お兄ちゃんバイトとかないの?」



「就活終わったらまたやろうかな」



家庭教師してたあの子とはアレからどぉなった?

どぉかなってたら捕まってるか…



でも…

お兄ちゃんとあの子は
どぉかなろうと思えばなれるんだよ



結婚だってできる



私とお兄ちゃんは
喧嘩しても喧嘩しなくても

ずっと…

ずっと家族でいるしかない



ま、喧嘩なんかしないけどね

お兄ちゃんは私と喧嘩する気なんかない



お父さん、お母さん、お兄ちゃん

楽しそうにお酒を飲んでる



ここで私が

私はお兄ちゃんと結婚したい!とか言ったら
どぉなるの?


どぉかなる?


もちろんどぉかなる


祝福される訳はなく
この幸せな家族団欒はなくなるだろうな



虚しくなる



ちらし寿司いくらのところをいっぱいすくった

今日はいつもよりいっぱいのってる

きっとお兄ちゃん帰ってきたから



みんなお兄ちゃん大好きだから



「瑛茉
ちらし寿司お兄ちゃんのも取っておいてね」



バレた

お母さんお兄ちゃんのために作ったんだもんね



「だって…
ちらし寿司久しぶりだし
いいじゃん」



私ってイジワルだな

お兄ちゃんのこと好きなのに…



「いいよ
瑛茉食べなよ
他にも食べるのあるし…」



ほらね

お兄ちゃんは喧嘩しない



お兄ちゃんの妹だから
さくらんぼもいくらもいっぱい食べれる



でもそんなの食べなくてもいいから…



「ごちそうさま」



「瑛茉、もぉいいの?
お兄ちゃん食べていいって言ってくれたのに」



「うん、もぉいい
お兄ちゃん食べて」



「もぉ…行儀悪い
残すなら最初から…………………」



あー…

最初から私とお兄ちゃんは兄妹だった



なんで…?



お母さんを恨んでも仕方ない



兄妹じゃなかったら
私たち出会えてないか…



最近ずっと
変なことばっかり考えてる



受験から逃げたいからかな?



「オレ、明日夕飯いらない
リョータと出掛けるから」



ナンパか?



「リョータくん元気なの?
この前、車乗ってるの見掛けたわ」



「元気だよ
仕事忙しいみたい」



「もぉ就職してるんだっけ?」



「そーそー…
建築会社」



「お母さん、私も明日夕飯いらない」



「あ、デートだっけ?
そ~言えば、前から言ってたわね」



「うん、まあ…」



「よく一緒に出掛けてるの?」



お兄ちゃんが聞いてきた



「ん、うん…たまにね」



中山とは初めてのデート


学校の帰りもいつも友達がいる
ふたりで出掛けたことない



「瑛茉、この前買ったワンピース着て行けば?」



「うん、そーだね
お母さんのバッグ貸して」



「あのショルダーの?」



「そぉそぉ…」



「瑛茉、やけに気合い入ってるね」



「うん、だって初めての彼氏だし…」



お兄ちゃん興味ないくせに…



「あんまり帰り遅くならないようにね」



「うん、大丈夫
中山に送ってもらうから…」



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