さよならの春 ぼくと真奈美の恋物語
蛙が鳴いている。 でも昔ほどじゃないらしい。
通り添いの家々の窓からは明かりが漏れている。 おそらくは笑っている家族たちが居る。
真奈美の家族はどうしているんだろう? お母さんにさえ会わなくなってしまった。
ぼくは夜道をトボトボ歩いている。 またバイクが通り過ぎていった。
やっと戻ってきたぼくは自分の部屋に飛び込んだ。 机の上には運動会らしい写真が飾ってある。
真奈美は紅組のキャプテン、、、だから6年生の時だね。
ぼくはというと白組の後ろのほうに居て、居るのか居ないのか分からない。
6年と言えば思い出すのはキャンプ。 父さんたちと山へ行った時のこと。
真奈美はバンガローが珍しかったらしくて、それだけではしゃいでいた。
「おーい、スイカを冷やしてくれないか?」 父さんが大きなスイカを持ってきた。
真奈美のお父さんはバーベキューの準備をしながら川のほうを見ている。
「猛君、スイカを運ぼう。」 いつものように真奈美は颯爽と歩いていく。
ぼくも後からスイカを抱えて追い掛ける。 夏の川は冷たくて気持ちいい。
「この辺でいいかな?」 流れが緩やかになっている辺りで真奈美が籠を下ろした時だった。
「キャー!」 真奈美の大きな声が聞こえたから慌ててそちらを見ると、、、。
「馬鹿! ジロジロ見ないでよ。 恥ずかしいじゃないの!」って真奈美が怒りだした。
「まあまあ、真奈美 早く着替えなさい。」 真奈美のお母さんが着替えを持って飛んできた。
怒るのも無理無いなあ。 コケに滑ってスッ転んでたんだもん。
「猛君は見ないのよ。 女の子が着替えてるんだからね。」 バンガローへ戻ってくると真奈美のお母さんはぼくにそう言った。
真奈美が着替えて出てくるとお父さんたちは炭に火を点けた。 「この炭はいいやつだぞ。」
新聞や雑誌を火にくべながら父さんは自慢そうである。 40分もすると肉も焼け始めていい匂いが漂ってきた。
(来年もやりたいなあ。) ぼくは嬉しそうな真奈美を見てそう思った。
「この肉はいいやつだねえ。」 「だろう? ブランドじゃないけどさ、知り合いに送ってもらったんだ。」
真奈美のお父さんは知り合いも多いから、いつもいい物を送ってもらえるらしい。
「俺なんて市役所で働いてるからさあ、知り合いが居ても頼めないんだよなあ。 周りがうるさくて、、、。」
父さんたちはビールを飲みながら話し込んでいる。 キャンプ場は貸し切り状態だ。
その後はお決まりのようにみんなで花火大会だ。 ヒューだのドンだのって賑やかでいいねえ。
ロケット花火を打ち上げてみる。 「こらこら、筒を覗くんじゃないぞ。」
真奈美のお父さんがぼくを見て眉を顰めている。 「ほんとだ。」
真奈美までがぼくを見て顔を顰めている。 「ごめん。」
シュポッとロケットが打ち上がる。 「いやあ、いいもんだなあ。」
「よしよし、じゃあ次はネズミだあ。」 ネズミ花火ってあっちこっち走り回るんだよなあ、まるで罰ゲームをさせられてるみたい。
それで最後にボンと弾ける。 そのたびに母さんたちはキャーキャー騒いでいる。
翌朝、母さんたちは早起きして味噌汁を作ってくれた。 「そろそろ起きない?」
「もう朝か?」 「お二人さん 昨日は遅くまで飲んでたんだもんねえ。」
「たまにはいいだろう?」 「いつもよねえ? 山下さん。」
「こりゃまいった。」 父さんは頭を掻きながらバンガローから出てきた。
あれから六年。 中学生になってからもぼくらは仲良しだった。
「あんたたち、結婚するのかい?」って母さんが聞いたくらいに仲良しだったのに、、、。
写真の隣には高校の修学旅行の時に、真奈美が買ってくれたキーホルダーが飾ってある。
どっかの温泉のゆるキャラだったよな、、、確か。 って半年前のことだろう?
忘れるなんてひどいよ。
「これさあ、私だと思って大切にしてね。」 真奈美はそう言って笑っていた。
でもまさか、こうなろうとは思わなかったよ。 何という運命のいたずらか、、、。
あの葉書を読み返してみる。 骨肉腫という言葉が胸に迫ってくる。
「もう手遅れなのよ。」 寂しそうに呟く真奈美の顔が浮かんでくる。
ぼくには何も出来ないのか?
真奈美が入院しているのはy大学病院の癌センター。
そのベッドの上で真奈美は何を思っているのか? ぼくには分らない。
ただ、会いたいという気持ちだけがぼくを焦らせていた。
居ても立っても居られないくらいに寂しいんだ。 なぜだろう?
今までこんなことを感じたことは無かった。 ずっと一緒だと思っていたから。
それがさ、もしかしたらこのまま離れるか持って思ったら寝れなくなるんだよ。
通り添いの家々の窓からは明かりが漏れている。 おそらくは笑っている家族たちが居る。
真奈美の家族はどうしているんだろう? お母さんにさえ会わなくなってしまった。
ぼくは夜道をトボトボ歩いている。 またバイクが通り過ぎていった。
やっと戻ってきたぼくは自分の部屋に飛び込んだ。 机の上には運動会らしい写真が飾ってある。
真奈美は紅組のキャプテン、、、だから6年生の時だね。
ぼくはというと白組の後ろのほうに居て、居るのか居ないのか分からない。
6年と言えば思い出すのはキャンプ。 父さんたちと山へ行った時のこと。
真奈美はバンガローが珍しかったらしくて、それだけではしゃいでいた。
「おーい、スイカを冷やしてくれないか?」 父さんが大きなスイカを持ってきた。
真奈美のお父さんはバーベキューの準備をしながら川のほうを見ている。
「猛君、スイカを運ぼう。」 いつものように真奈美は颯爽と歩いていく。
ぼくも後からスイカを抱えて追い掛ける。 夏の川は冷たくて気持ちいい。
「この辺でいいかな?」 流れが緩やかになっている辺りで真奈美が籠を下ろした時だった。
「キャー!」 真奈美の大きな声が聞こえたから慌ててそちらを見ると、、、。
「馬鹿! ジロジロ見ないでよ。 恥ずかしいじゃないの!」って真奈美が怒りだした。
「まあまあ、真奈美 早く着替えなさい。」 真奈美のお母さんが着替えを持って飛んできた。
怒るのも無理無いなあ。 コケに滑ってスッ転んでたんだもん。
「猛君は見ないのよ。 女の子が着替えてるんだからね。」 バンガローへ戻ってくると真奈美のお母さんはぼくにそう言った。
真奈美が着替えて出てくるとお父さんたちは炭に火を点けた。 「この炭はいいやつだぞ。」
新聞や雑誌を火にくべながら父さんは自慢そうである。 40分もすると肉も焼け始めていい匂いが漂ってきた。
(来年もやりたいなあ。) ぼくは嬉しそうな真奈美を見てそう思った。
「この肉はいいやつだねえ。」 「だろう? ブランドじゃないけどさ、知り合いに送ってもらったんだ。」
真奈美のお父さんは知り合いも多いから、いつもいい物を送ってもらえるらしい。
「俺なんて市役所で働いてるからさあ、知り合いが居ても頼めないんだよなあ。 周りがうるさくて、、、。」
父さんたちはビールを飲みながら話し込んでいる。 キャンプ場は貸し切り状態だ。
その後はお決まりのようにみんなで花火大会だ。 ヒューだのドンだのって賑やかでいいねえ。
ロケット花火を打ち上げてみる。 「こらこら、筒を覗くんじゃないぞ。」
真奈美のお父さんがぼくを見て眉を顰めている。 「ほんとだ。」
真奈美までがぼくを見て顔を顰めている。 「ごめん。」
シュポッとロケットが打ち上がる。 「いやあ、いいもんだなあ。」
「よしよし、じゃあ次はネズミだあ。」 ネズミ花火ってあっちこっち走り回るんだよなあ、まるで罰ゲームをさせられてるみたい。
それで最後にボンと弾ける。 そのたびに母さんたちはキャーキャー騒いでいる。
翌朝、母さんたちは早起きして味噌汁を作ってくれた。 「そろそろ起きない?」
「もう朝か?」 「お二人さん 昨日は遅くまで飲んでたんだもんねえ。」
「たまにはいいだろう?」 「いつもよねえ? 山下さん。」
「こりゃまいった。」 父さんは頭を掻きながらバンガローから出てきた。
あれから六年。 中学生になってからもぼくらは仲良しだった。
「あんたたち、結婚するのかい?」って母さんが聞いたくらいに仲良しだったのに、、、。
写真の隣には高校の修学旅行の時に、真奈美が買ってくれたキーホルダーが飾ってある。
どっかの温泉のゆるキャラだったよな、、、確か。 って半年前のことだろう?
忘れるなんてひどいよ。
「これさあ、私だと思って大切にしてね。」 真奈美はそう言って笑っていた。
でもまさか、こうなろうとは思わなかったよ。 何という運命のいたずらか、、、。
あの葉書を読み返してみる。 骨肉腫という言葉が胸に迫ってくる。
「もう手遅れなのよ。」 寂しそうに呟く真奈美の顔が浮かんでくる。
ぼくには何も出来ないのか?
真奈美が入院しているのはy大学病院の癌センター。
そのベッドの上で真奈美は何を思っているのか? ぼくには分らない。
ただ、会いたいという気持ちだけがぼくを焦らせていた。
居ても立っても居られないくらいに寂しいんだ。 なぜだろう?
今までこんなことを感じたことは無かった。 ずっと一緒だと思っていたから。
それがさ、もしかしたらこのまま離れるか持って思ったら寝れなくなるんだよ。