廻った世界で,また君と恋を紡ぐ。



「意味分かんない。せめて書けばいいのに。ばか真面目にそんな訳わからないこと祈るだけなんて,七夕を履き違えてるよ」





残念ながら,ウケを狙ったわけでも冗談を言った訳でもないんだな。

やっぱ楽しまなきゃと呟くお姉ちゃんに,にこりと笑みだけを向ける。

実際,今のお姉ちゃんと同じ年の男女がこの日に亡くなったんだもの。

今日祈るべきなのは,病じゃない。

怖いのは,過ごした過去も進むべき未来も一瞬で奪った,事故,なんだな。

あ,特に交通事故,ね。

そんな朝はやんわりと穏やかな空気で過ぎて行き。

夕方にはまた同じ場所に帰ってくるだけ。

帰宅するといつも通り共働きの両親はまだいなかった。

だけど知っている。

今日は2人とも早めに帰ってくることを。

七夕だからと少し豪華な夕飯になることを。

いつもお腹を空かせている成長期な私は,わくわくとTVをつけた。

ほんとは,インパクトの弱い七夕をわざわざ盛り上げるのが,半分私のためだって気付いてる。

だからその気持ちに報いるために,5時半(しぼうじこく)を過ぎた夜だけは楽しむことにしているのだ。

かちゃりと控えめに玄関が鳴った。

オシャレで繊細なお姉ちゃんの音。



「お帰り! お姉ちゃん,今日の夜ご飯何だとおも……」



続いて聞こえた



「お邪魔します」



の声に,私は張り上げた声を萎める。

お客様?

それも,男子の……?

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