純愛メランコリー
第二章 終わらない悪夢
第3話
私が殺され続けるループは、終わっていなかった。
いや、一度は確かに終わったはずだけれど、再び始まっていたのだ。
『今度はどうやって殺して欲しい?』
向坂くんの口ぶりからして、殺されたのは“昨日”が初めてじゃない。
記憶を失っただけで、きっと私は既に何度も殺されている。
今度は、向坂くんに殺される1日がループするんだ。
(そんなの────)
嫌だ。
到底信じられない。信じたくない。
「…………」
私は唇を噛み締めた。眉根に力が込もる。
理人に殺される日々を繰り返していた頃から、向坂くんはずっと私の味方でいてくれた。
死に返るループなんて突飛な話をしてもいつも信じてくれたし、諦めそうになる私を支えてくれた。
いつだって、優しさと勇気と自信をくれた。
向坂くんがいたから、私は頑張れた。
────なのに、そんな彼があんなふうに豹変してしまうなんて。
どうして、私は向坂くんに殺されるのだろう?
そう考えたとき、ふと彼の言葉が蘇ってきた。
『どうなるかな。間欠泉みたいに血が出たら面白ぇな』
もしかしたら、今までずっと気付かなかっただけで、向坂くんはもともとそういう異常性を持ち合わせた人物だったのかもしれない。
猟奇的な本性から、快楽殺人を好むようなサイコパス。
にわかには信じられないけれど、現状が物語っている。
だったら、私が殺されるのは彼のエゴのため?
残虐な欲求を満たすためだけに、永遠に殺され続けるの……?
気が遠くなるような思いがした。
閉じ込められたこの繰り返す世界には、もう頼れる人は誰もいない。
私はひとりぼっちだ。
それを自覚すると、みるみる心細さが募っていき、指先が冷えていく。
ループも死も、何度も繰り返したけれど、決して慣れるものじゃない。
今にも恐怖と孤独に飲み込まれてしまいそうだった。