純愛メランコリー
第2話
────5月7日。
アラームの時間通りに目を覚まし、私は深く息をついた。
まともに眠れたのかよく分からないくらい、何だかどっと疲れている気がする。
身体を起こしたとき、じくじくと刺すように胸が痛んだ。
「痛……」
何だろう、この感じ。
まるで鋭利なナイフで刺されたかのような強い痛みは、支度を終えた頃にも消えなかった。
────ふとしたときに理人の最期を思い出しては塞ぎ込み、眠れない夜を繰り返す毎日。
寝不足なせいで、身体が不調を来しているのかもしれない。
そう結論づけ、ひとまず納得しておくしかなかった。
支度を整えて家を出た私は、コンビニに寄ってから学校へ向かうことにする。
ループが終わって1週間……。
理人の死の衝撃は、少しも癒えないままだ。
「……っ」
昇降口で靴を履き替えたとき、不意に目眩を覚え、思わずたたらを踏んだ。
コンビニで買ったミルクティーのペットボトルが手からこぼれ落ち、ころころとすのこに転がる。
ふわ、と浮遊感に包まれた。
そうかと思えば、次の瞬間には誰かに両肩を掴まれていた。
「大丈夫?」
覗き込むようにして問われ、はっとした。
「……あ」
……びっくりした。
一瞬、理人かと思った。
支えてくれたのは、クラスメートの相原くんだった。
「だ、大丈夫。ごめん、ありがとう。……相原くん」
あまり関わったことはないが、人懐こい性格で友だちが多いことは知っている。
理人や向坂くんよりも身長が高くないためか、どこか身近に感じてしまう。
童顔で可愛らしい顔立ちだから威圧感がない、というのもあるかもしれない。
「蒼でいいよ。ていうか、本当に無理してない? 今にも死にそうな顔してるよ」
彼は私を離すとそう言いつつ、屈んでミルクティーを拾ってくれる。
差し出されたそれを受け取りながら、私は自分の頬に触れた。
(死にそう……?)
そんなにひどい顔してるのかな。
鏡を見なくても、自分の顔色が青白いことは何となく分かる。
何だか身体の内側が重くて、そのせいでだるい。
「……平気。ちょっと寝不足で、調子悪くて」
曖昧に笑うと、蒼くんは眉を下げた。
「……理人くんがあんなことになって、ぐっすり眠れるわけないよね」
何だか、少しだけほっとした。
私の抱く悲しみに歩み寄り、共感してくれる人がいるという事実に。