水色の手紙をあなたに
ぼくは黙ったまま、何処へ向かうということも無く車を走らせている。
「今夜も一緒に居てくれますか?」 「居るのは別に構いませんよ。 ただ、、、。」
「居てくれるだけでいいの。 寂しかったから。」 助手席に座っている雅子さんは何となく頬を赤らめているようだ。
照れてるのか、緊張しているのか分からないけれど、、、。
しばらく走ると防波堤が見えてきた。 そう、ここは海にも近いんだ。
車を止めて窓を開けると波の音が聞こえる。 防波堤の根っこの所に車を止めてぼくもシートにもたれた。
「ここはたまに来るんですよ。」 「そうなんですか? 私は初めてです。」
しばらく天井を見詰めていた雅子さんはドアを開けて外へ出た。 先のほうでは磯釣りを楽しんでいる人たちが居る。
遠くへ餌を撒いて釣り糸を垂れる。 邪魔なんてしようものなら物凄い目で睨まれる。
大きな魚は釣れないけれど、それなりに楽しいらしいんだ。
ぼくも追い掛けるように車外へ出てきた。 ボーっとしているとそのまま海に飛び込むんじゃないかって言うくらいに雅子さんはぼんやりしている。
静かに防波堤を歩いていく。 辺りは真っ暗である。
沖を通る船も無く、ただただ波の音だけが聞こえている。 ふと雅子さんがしゃがみこんだ。
「どうしたんですか?」 「ちょっと目眩がしたの。」
ぼくが隣に座ると雅子さんは安心したようにぼくにもたれてきた。 静かな空間にぼくらだけが居る。
ぼくはそっと彼女の肩に腕を回した。 「暖かいわね。」
何分くらい居たのだろう? ぼくらは立ち上がると車へ戻ってきて後部座席に飛び込んだ。
そして買ってきたカルピスを二人で飲む。 「間接キスね。」
「雅子さん、、、。」 「あなたとキスしたい。」
そしてぼくらは仄かな明りの下で熱く絡み合ったのである。 我に返った時、ぼくには罪悪感すら無くなっていた。
「ほんとに雅子さんを愛してる。」 「私もよ。 ずっと離れたくないわ。」
ぼくはまた雅子と絡み合った。 何もかも彼女から奪い去るように。
夜中の道をアパートに向けて車は走り続けている。 もちろん大竹アパートではない。
雅子さんはぐったりしてしまって助手席で寝入ってしまった。 幸せそうな顔でね。
あれだけ激しく絡んだのに大丈夫なのかなあ? 駐車場に車を止めると彼女を揺り起こして部屋に入る。
真っ暗な部屋の中で雅子の寝息が聞こえている。
(やっちゃいけないことをやっちゃったな。) (やったもん勝ちだぜ。 相手は奥さんじゃないか。 儲けたな。)
意地悪く笑う自分が喧嘩している。 こんなことは初めてだ。
取り敢えず明日は雅子さんのためにも休みを取ろう。 それがいい。
翌朝、ぼくが目を覚ましてみると雅子さんはもう起きていて、朝食を作っていた。
「おはようございます。」 「早いんですねえ?」
「寝れました?」 「おかげで安心して寝れたみたいよ。」
「それは良かった。」 「勝手に料理なんかしてごめんなさい。」
「いや、ぼくも助かります。 いっつも同じ物しか作らないから。」
雅子は味噌汁と卵焼きをテーブルに置いた。 「やっぱり奥さんに作ってもらうのはいいなあ。」
「そうですか? 旦那は作っても喜んでくれなくて、、、。」 今日の彼女はなんだか嬉しそうである。
「食器も多いですよねえ?」 「不思議ですか?」
「だって吉田さんは一人じゃ、、、?」 「面倒くさがりなんで多く買ってあるんですよ。」
「誰だってそうじゃないかなあ? 私だって面倒くさくなることは有りますから。」
味噌汁を飲みながら何気なく顔を見合わせてみる。 「いつもは黙って食べてるんですよ。」
「そうなんですか?」 「旦那はね、聞いたことにも答えてくれないの。」
「そうなんだ。」 「でもよかった。 吉田さんとこうして話せて。」
「家まで送りましょうか?」 「もう少し居たいわ。 旦那も帰ってこないから。」
ということでぼくも今日は家に居る。 腹が痛いって会社に電話して休ませてもらった。
雅子さんは「世話になってるだけじゃ申し訳ないから。」って部屋の掃除をしてくれている。
そこまでされたらぼくだって申し訳なくなるじゃない。
だってさあ、夜のドライブに連れ出して絡み合った挙句に自分の部屋にまで連れてきたんだよ。 周りにはとても言えないよ。
「お昼はどうしますか?」 掃除が終わったところで雅子が聞いてきた。
「うーーーーーん。」 「材料が無ければ買ってきますよ。」
「そこまでは、、、。」 ただのお客さんのはずだったのに、いつの間にか彼女になってしまっている。
どうしたらいいんだろう?
会社のほうではぼくが休んだくらいではどうってことも無いらしく、いつも通りに動いている。
金沢さんも書類をまとめては何処かへ飛び出していく。
昼になると、みんなは思い思いに休憩を取る。 家では、、、。
ぼくと雅子がまるで夫婦みたいに楽しそうに買い物をして帰ってきたところである。
「こんなにくっついちゃまずいですよ。」 「そう? 心配しなくてもいいわよ。」
「でも、この辺りは知ってる人が多いから。」 「でも私のことは知らないでしょう?」
「それはそうですけど、、、。」 「不安性何ですね 吉田さんって、、、。」
「初めてだから、、、。」 「堂々としてれば大丈夫だわ。」
雅子はぼくの部屋の鍵を開けた。 まるで「前から住んでましたよ。」って言ってるみたい。
(これじゃああべこべだよ。)
材料をひとまず冷蔵庫に放り込んだぼくらはまた互いの顔を見合わせた。
ほんの数日しか会っていないのに、何年も前から知っているような錯覚に襲われるのはなぜだろう?
絡み合ったからかな? それとも?
「グー、、、。」 「お腹鳴りましたよね? 今、、、。」
「鳴っちゃった。 あんまり食べてなかったから。」 雅子は初めて真っ赤な顔をした。
「さて、お昼にしましょうか。」 そう言って焼きそばを作り始める。
そんな雅子の後姿を見ていたぼくはまた絡みたい衝動に駆られるのであった。
(ダメだよ 今は。) 懸命に抑えているのだが、揺れるスカートには萌え上がってしまう。
またまた自分同士の喧嘩が始まった。 でもどうしても抑えられなくて、、、。
我慢できなくなったぼくは雅子に抱き着いてしまった。 「ウフ、寂しかったんですね?」
料理を作っている雅子は軽蔑するでも避けるでもなく笑っている。 これが主婦の余裕なのだろうか?
払い除けることもせず淡々と作り続ける雅子にぼくはさらに魅かれていくのであった。
やがて焼きそばが出来上がり、ぼくらはいつものように向き合った。
でも雅子がもぞもぞしている。 何をしてるのかと思ったら、隣に座りなおしたんだ。
「近いほうがいいでしょう?」 またまた彼女はニコッと笑う。
太腿が触れ合っているのだからドキドキするしかなかった。
黙っていても温もりが伝わってくる。 三十路女の色っぽさに無力であることをぼくは痛感したのだった。
自分を抑えることってこんなにも難しい物なのか?
「今夜も一緒に居てくれますか?」 「居るのは別に構いませんよ。 ただ、、、。」
「居てくれるだけでいいの。 寂しかったから。」 助手席に座っている雅子さんは何となく頬を赤らめているようだ。
照れてるのか、緊張しているのか分からないけれど、、、。
しばらく走ると防波堤が見えてきた。 そう、ここは海にも近いんだ。
車を止めて窓を開けると波の音が聞こえる。 防波堤の根っこの所に車を止めてぼくもシートにもたれた。
「ここはたまに来るんですよ。」 「そうなんですか? 私は初めてです。」
しばらく天井を見詰めていた雅子さんはドアを開けて外へ出た。 先のほうでは磯釣りを楽しんでいる人たちが居る。
遠くへ餌を撒いて釣り糸を垂れる。 邪魔なんてしようものなら物凄い目で睨まれる。
大きな魚は釣れないけれど、それなりに楽しいらしいんだ。
ぼくも追い掛けるように車外へ出てきた。 ボーっとしているとそのまま海に飛び込むんじゃないかって言うくらいに雅子さんはぼんやりしている。
静かに防波堤を歩いていく。 辺りは真っ暗である。
沖を通る船も無く、ただただ波の音だけが聞こえている。 ふと雅子さんがしゃがみこんだ。
「どうしたんですか?」 「ちょっと目眩がしたの。」
ぼくが隣に座ると雅子さんは安心したようにぼくにもたれてきた。 静かな空間にぼくらだけが居る。
ぼくはそっと彼女の肩に腕を回した。 「暖かいわね。」
何分くらい居たのだろう? ぼくらは立ち上がると車へ戻ってきて後部座席に飛び込んだ。
そして買ってきたカルピスを二人で飲む。 「間接キスね。」
「雅子さん、、、。」 「あなたとキスしたい。」
そしてぼくらは仄かな明りの下で熱く絡み合ったのである。 我に返った時、ぼくには罪悪感すら無くなっていた。
「ほんとに雅子さんを愛してる。」 「私もよ。 ずっと離れたくないわ。」
ぼくはまた雅子と絡み合った。 何もかも彼女から奪い去るように。
夜中の道をアパートに向けて車は走り続けている。 もちろん大竹アパートではない。
雅子さんはぐったりしてしまって助手席で寝入ってしまった。 幸せそうな顔でね。
あれだけ激しく絡んだのに大丈夫なのかなあ? 駐車場に車を止めると彼女を揺り起こして部屋に入る。
真っ暗な部屋の中で雅子の寝息が聞こえている。
(やっちゃいけないことをやっちゃったな。) (やったもん勝ちだぜ。 相手は奥さんじゃないか。 儲けたな。)
意地悪く笑う自分が喧嘩している。 こんなことは初めてだ。
取り敢えず明日は雅子さんのためにも休みを取ろう。 それがいい。
翌朝、ぼくが目を覚ましてみると雅子さんはもう起きていて、朝食を作っていた。
「おはようございます。」 「早いんですねえ?」
「寝れました?」 「おかげで安心して寝れたみたいよ。」
「それは良かった。」 「勝手に料理なんかしてごめんなさい。」
「いや、ぼくも助かります。 いっつも同じ物しか作らないから。」
雅子は味噌汁と卵焼きをテーブルに置いた。 「やっぱり奥さんに作ってもらうのはいいなあ。」
「そうですか? 旦那は作っても喜んでくれなくて、、、。」 今日の彼女はなんだか嬉しそうである。
「食器も多いですよねえ?」 「不思議ですか?」
「だって吉田さんは一人じゃ、、、?」 「面倒くさがりなんで多く買ってあるんですよ。」
「誰だってそうじゃないかなあ? 私だって面倒くさくなることは有りますから。」
味噌汁を飲みながら何気なく顔を見合わせてみる。 「いつもは黙って食べてるんですよ。」
「そうなんですか?」 「旦那はね、聞いたことにも答えてくれないの。」
「そうなんだ。」 「でもよかった。 吉田さんとこうして話せて。」
「家まで送りましょうか?」 「もう少し居たいわ。 旦那も帰ってこないから。」
ということでぼくも今日は家に居る。 腹が痛いって会社に電話して休ませてもらった。
雅子さんは「世話になってるだけじゃ申し訳ないから。」って部屋の掃除をしてくれている。
そこまでされたらぼくだって申し訳なくなるじゃない。
だってさあ、夜のドライブに連れ出して絡み合った挙句に自分の部屋にまで連れてきたんだよ。 周りにはとても言えないよ。
「お昼はどうしますか?」 掃除が終わったところで雅子が聞いてきた。
「うーーーーーん。」 「材料が無ければ買ってきますよ。」
「そこまでは、、、。」 ただのお客さんのはずだったのに、いつの間にか彼女になってしまっている。
どうしたらいいんだろう?
会社のほうではぼくが休んだくらいではどうってことも無いらしく、いつも通りに動いている。
金沢さんも書類をまとめては何処かへ飛び出していく。
昼になると、みんなは思い思いに休憩を取る。 家では、、、。
ぼくと雅子がまるで夫婦みたいに楽しそうに買い物をして帰ってきたところである。
「こんなにくっついちゃまずいですよ。」 「そう? 心配しなくてもいいわよ。」
「でも、この辺りは知ってる人が多いから。」 「でも私のことは知らないでしょう?」
「それはそうですけど、、、。」 「不安性何ですね 吉田さんって、、、。」
「初めてだから、、、。」 「堂々としてれば大丈夫だわ。」
雅子はぼくの部屋の鍵を開けた。 まるで「前から住んでましたよ。」って言ってるみたい。
(これじゃああべこべだよ。)
材料をひとまず冷蔵庫に放り込んだぼくらはまた互いの顔を見合わせた。
ほんの数日しか会っていないのに、何年も前から知っているような錯覚に襲われるのはなぜだろう?
絡み合ったからかな? それとも?
「グー、、、。」 「お腹鳴りましたよね? 今、、、。」
「鳴っちゃった。 あんまり食べてなかったから。」 雅子は初めて真っ赤な顔をした。
「さて、お昼にしましょうか。」 そう言って焼きそばを作り始める。
そんな雅子の後姿を見ていたぼくはまた絡みたい衝動に駆られるのであった。
(ダメだよ 今は。) 懸命に抑えているのだが、揺れるスカートには萌え上がってしまう。
またまた自分同士の喧嘩が始まった。 でもどうしても抑えられなくて、、、。
我慢できなくなったぼくは雅子に抱き着いてしまった。 「ウフ、寂しかったんですね?」
料理を作っている雅子は軽蔑するでも避けるでもなく笑っている。 これが主婦の余裕なのだろうか?
払い除けることもせず淡々と作り続ける雅子にぼくはさらに魅かれていくのであった。
やがて焼きそばが出来上がり、ぼくらはいつものように向き合った。
でも雅子がもぞもぞしている。 何をしてるのかと思ったら、隣に座りなおしたんだ。
「近いほうがいいでしょう?」 またまた彼女はニコッと笑う。
太腿が触れ合っているのだからドキドキするしかなかった。
黙っていても温もりが伝わってくる。 三十路女の色っぽさに無力であることをぼくは痛感したのだった。
自分を抑えることってこんなにも難しい物なのか?