水色の手紙をあなたに
 アパートの前は小さな公園である。 4時を過ぎると下校した子供たちが遊んでいる。
ずっと以前はもっとたくさんの遊具が置いてあって、規模もそれなりに大きかった。
でも危険な遊具を撤去する動きに煽られて小さくなってしまった。 メリーゴーランドとか箱ブランコとか有ったんだよな。
 ぼくが公園を眺めていると雅子がベランダに出て行った。 今朝のうちに洗濯もしてくれたんだって。
「そろそろ乾いてる頃だから取り込みますね。」 (そこまでやらせちゃまずいよ、、、、。)
とは思うが、だからって断る理由も無い。 なんか幸せそうだね。
「こんな暮らしがしたかった。」 ポツリと呟いた言葉が妙に刺さってくるのはなぜ?
 取り込んだ洗濯物を畳み始める。 困惑しているぼくを見てまた雅子がニコッと笑うんだ。
「任せてくださいね。」 ああもう、ぼくはなんてことをしてるんだ?
奥さんを自分の部屋に連れ込んで、こんなことまでさせちゃって、、、。
(いい加減に送らないとまずいな。) そんなことを考えた時、雅子がまた寂しそうな目でぼくを見た。
「私、吉田さんが好きなんです。 満たされたいんです。 もう少しだけいいでしょう?」 「分かりました。」
「ごめんなさい。 押し掛けておいて我儘ばかりで、、、。」 「謝らなくてもいいんです。 心配だったから、、、。」
「優しいんですね 何処までも。」 元はと言えばクリーナーを買ってくれたただのお客さん。
それがここまで親密になるなんて、、、。
洗濯物をカラーボックスに仕舞った彼女は初めて安堵の息を吐いて、テレビの前に座った。 静かな時間が過ぎていく。
ぼくはそれが耐え切れなくて雅子の肩に腕を回した。
「暖かい。 ずっとこうしていたいわ。」 雅子も安心したようにぼくにもたれてきた。
(結婚すると辛いことが増えてくるのかなあ?) 彼女を見ているとそう思ってしまう。
(たっぷり甘えてください。 ぼくでよければ、、、。) 口には出せないけれど、ぼくはそう思った。

 夕方になり、真昼の太陽が西の空に傾いてしまうと、雅子も決意したようだ。
「明日には帰りますね。 いつまでも甘えていられないわ。」 「来たくなったらいつでも来てくださいね。」
「ありがとう。」 夕食を食べながらぼくらは大声で笑った。
 片付けをしている雅子を見ていると、またまた萌えてきてしまう。 病気だな、完全に。
そうは思うけど、気付いたら彼女の後ろに立っている。 「襲ってもいいわよ。」
そんなぼくの気持ちを見透かしていたのか、雅子も今夜は挑戦的である。 見えるようにお尻を振っていたりする。
(やべえよ、、、これじゃあ誘惑されっぱなしだ。) 焦っているぼくにまた雅子が声を掛けてくる。
「あなたの好きにしていいのよ。 あなたの物なんだから。」 そんなことを言われたら堪えられなくなっちゃうよ。
息も荒くなってきたぼくは、まるで鎖に繋がれた犬みたいにもがいている。 そこへ雅子がさらに追い打ちを掛けてくる。
「私ね、吉田さんと萌えたいの。 燃え尽きてしまいたいの。」 ウルウルしている眼を見てしまったらもうダメだ。
抑えきれなくなったぼくは雅子を押し倒して絡んだ。
そして何もかも燃え尽きたように寝入ってしまった。
< 5 / 12 >

この作品をシェア

pagetop