年下の幼馴染くんはどうしても私を譲れない
第5話 海と初恋
◯海・砂浜(7月)
テスト明けの土曜日。
約束通り、ゆめか、誉、高市累、高市麗美、須藤の5人で海に来ている。
それぞれ水着(+パーカーなど)に着替えて出てきて、カラフルなパラソルが並ぶ砂浜を歩いている。
ゆめかモノローグ(テストも終わり、季節は夏)
(海です)
高市「おおーー!海!太陽!美女!夏だね!!」
須藤「元気だなー」
誉「暑い。溶ける」
麗美がゆめかに耳打ちをする。
麗美「ゆめかさん、今日は勝負の1日ですよ」
ゆめか(あはは、プレッシャーだなぁ)
(でも、誉の本音に触れるために)
(自分の気持ちに向き合うって決めたから)
ゆめか「うん、今日は幼馴染抜きにして考える」
ゆめか(それで前に進もう)
(どんな答えが出たとしても)
麗美「わぁ、今日のゆめかさん、かっこよくて素敵です…!私も協力するので、任せてください」
ゆめか(だ、大丈夫かな…)
麗美は自信満々にウインクをしていたが、ゆめかは不安を覚えた。
◯海・パラソルの下
陣取ったパラソルの下で、高市塁はスマホで海の写真を撮り、須藤は泳げない麗美の浮き輪を膨らませ、誉は暑さのあまりビニールシートで水を飲んでいた。
麗美は鏡を見たりバッグを漁ったりしていて、ゆめかは初めての海イベントに「わぁ…」とキョロキョロしている。
カシャカシャ(写真を撮る音)
高市「いいねぇ海!」
誉「っていう奴の気が知れねぇ。暑すぎだろ」
既にはしゃいでいる高市に、誉はすかさず死んだ顔でツッコむ。
誉「須藤はなにやってんの」
須藤「麗美の浮き輪準備。ないと溺れるから」
須藤が話しているところへ麗美がやってきて、ラッシュガードを脱ぐと、須藤に日焼け止めを渡しながら言った。
麗美「颯来!背中塗って~?」
須藤「ん、あとちょっとだから待って」
須藤は浮き輪のほうを見ながら返事をした。
浮き輪が完成して、麗美の方を見た須藤は、見事に固まる。
麗美「ど?可愛い?」
麗美はくるり、と一周して、口元に人差し指を当てながら聞く。小悪魔的なあざといその仕草さえ、麗美がやれば可愛いを上塗りするだけだ。
固まって言葉を発しない須藤に、麗美がもう一度聞こうとする。
麗美「ねえ」
麗美「可愛い?」
須藤「可愛い」
麗美の質問と重なった須藤の答えに、麗美は照れながらも満足そうに笑う。
ーーパンパン(両手を叩く音)
高市「はいはい、兄いますよー」
パンパン、と手を叩く音がしたかと思うと、高市塁が二人の間に、すっと入ってきた。
兄に邪魔された麗美はムッとしながらも、一部始終を文字通り無表情で眺めていた誉と目が合うと、ニヤリとした顔になり、わざとらしく言った。
麗美「橘高誉、暇ならゆめかさんの背中も塗ってあげてよ。まだだと思うから」
キョロキョロと海を見ていたゆめかは、自分の名前が聞こえてきて、ハッとして麗美の方を見る。
そして、麗美がウインクしてきたのを見て、嫌な予感が的中したことを悟った。
誉「背中、塗る?」
ビニールシートに座っていた誉は、ゆめかの方を見上げて聞く。
ゆめか(麗美ちゃん~~!協力ってこういう…!)
ゆめかは涙目になりながらも、今日の目的のため、と思って頷いた。
ゆめか「お、お願いします…」
誉「ん、貸して」
手を差し出した誉に、取り出した日焼け止めを渡すと、ゆめかは誉が足を広げて座っている間に、ちょこんと正座で座る。
ゆめか(幼馴染抜き…幼馴染抜き…)
誉「………」
ゆめか(幼馴染抜き…で、これは、無理では?!)
誉「………ゆめか?」
誉は困ったような表情をしているが、ゆめかはパニックに近く、それどころではなかったので気づかない。
誉は日焼け止めを置くと、ゆめかの後ろから手を回し、ゆめかが着ていたパーカー型のラッシュガードのジップを下ろす。
ゆめか「!!」
ゆめかが驚いてビクッと肩を震わせて振り向くが、誉は構わず一番下まで下ろすと、肩から後ろにするんとパーカーを落とす。ゆめかが袖を通しているため、そこでかろうじて止まっている。
誉「着てたら塗れない」
ゆめか「……っ」
ゆめかはそこで恥ずかしさが限界に達して、立ち上がると、ダッと海の方に走って逃げる。
◯海・砂浜と海の境目くらい
突然パラソルから猛ダッシュしてきたゆめかに、周りに遊びに来ていた人たちからの注目も集まる。
ゆめか(あ~バカバカ)
(これじゃ何も変わらないよ)
(というか)
ゆめかは肘から下にだらっと垂れたラッシュガードの袖口をぎゅっと握る。
ゆめか(もう)
(答え出てるかもしれない)
(ちゃんと確かめなきゃ)
ゆめかが戻ろうとしてUターンすると、どんっと男にぶつかった。
ゆめか「あ、すみません」
ぶつかった男「……いや、こちらこそ」
日差しが眩しくて、ゆめかはその男の顔がよく見えないまま、頭を下げた。その男は数秒ゆめかを見ていて不思議に思ったものの、その男の後ろから誉の声がすると、男は去っていった。
誉「ゆめか!」
誉は去っていった男の方を一瞬にらんでいたが、すぐゆめかのラッシュガードを肩まで戻し、フードまで被せた。
誉「急に1人で行かないで。心配する。…俺のせいなら謝るから」
ゆめかはブンブンと首を横に振る。
ゆめか「ちがうの、誉は悪くない」
その返事を聞いた誉は、ゆめかに手を差し出す。
誉「触っていいなら、手貸して」
ゆめかがそっと手を置くと、そのまま誉がゆめかの手を引いてパラソルに戻る。
◯海・パラソルの下
二人がパラソルに戻ると、高市兄妹と須藤は3人でアイコンタクトをする。
高市「おかえりー」
麗美「もう準備できたから3人で先に遊んでるね」
須藤「終わったら来いよ」
そう口々に言って、3人はパラソルを去り、ここにはゆめかと誉だけになった。
ゆめかと誉は立ったまま、向かい合っている。
ゆめか「………」
誉「………」
誉「…また脱がす?」
ゆめかはシュバババッと音が聞こえるかのように、素早い動きでフードを後ろにやり、ラッシュガードを自分で脱ぐと身体の前に持って、誉に背を向けて体育座りで座った。
誉も続けて後ろに座る。
ゆめか「…逃げたのは誉のせいだよ」
ゆめかが膝に顔を埋めて言うと、ポニーテールにしていた髪の束がぱらっと顔の横に落ちる。
ゆめか「誉がすること、誉が言うこと、全部恥ずかしくなったから。ごめんね」
ゆめか「…でも。いまも死ぬほどドキドキしてるし、死ぬほど恥ずかしいけど、嫌じゃないから。えっと…、さ、触って?」
ゆめか(っなんか、この言い方だと変態みたいだけど)
ゆめかが言いたいことを全部言って、顔を埋めたまま耳まで赤くしていると、誉は背中に触れるか触れないかくらいのキスをした。
ゆめかは相変わらずビクッとしたけれど、もう逃げたりはしなかった。
ゆめか(…今のなんだろ?)
誉「許可出たから触っただけ」
ゆめかの疑問が聞こえていたかのように、誉が答える。
ゆめか「う、うん?」
そのまま誉がゆめかの背中に日焼け止めを塗っていく。
ゆめか(早く終わって~)
ゆめかが目をぎゅっとつむって耐えていると、調子の戻った様子の誉が耳元で追い討ちをかけてくる。
誉「ねぇ、いま、俺に触られてドキドキしてんの?」
ゆめか(ほんとはとっくに分かってた)
(だから気づかないふりをして逃げてたの)
ゆめかモノローグ(幼馴染抜きにしたら)
(残るのは一つだけ)
ゆめかは膝に埋めていた顔を上げ、目を開けて、キッと誉を睨むようにして言う。
ゆめか「してるよバーカ」
ゆめかモノローグ(好きな人)
誉は嬉しそうに笑っていた。
◯海・海辺
周りの注目を集めていたゆめかと誉がパラソルから出ると、耳を澄まして遠巻きに見ていた周囲の人たちがなぜか顔を赤くしていた。
周囲の人A(青春だなぁ)
周囲の人B(なんかエロかったな)
周囲の人C(美男美女で羨ましい)
2人はそれに気づかず、高市兄妹と須藤たちが遊んでいた海辺に合流する。
浮き輪でプカプカ浮いていた麗美は、さっと海を出て、ゆめかに近づいて腕を取る。麗美は男子から距離を取り、足首だけ海に浸かるくらいのところにゆめかを誘導すると、心配そうに声をかける。
麗美「ゆめかさん…」
ゆめか「麗美ちゃん、さっきは驚かせてごめんね…私、誉のこと好きだってちゃんと分かったよ」
ゆめかは、麗美にだけこそっと報告をすると、麗美は両手を握りしめ、顔をぐいっと寄せて確認をしてくる。
麗美「…!ちゃんと1人の男としてって意味ですよね?!」
ゆめか「うん」
ゆめかモノローグ(この幼馴染の世界を守りたかったけど)
(1度壊してみよう)
(それでまた新しく始めればいい)
ゆめか「誉から離れようとするのはもうやめる」
ゆめかモノローグ(必要なのは)
(逃げない覚悟)
ゆめかは笑顔で答える。
誉(さっきゆめかとぶつかった男…)
高市と須藤は海から上がると、考え事をしていた誉のところへ行く。
高市「どした?いい感じになったと思ったけど、難しい顔して」
誉「いや、ちょっと」
誉「…つーか、さっき馬鹿にして悪かったな」
高市「ん?」
誉「やっぱ海いいわ」
考え事をやめて、海の方を見た誉の視線の先には、笑顔のゆめかがいた。透けるミルクティー色の髪が太陽に反射してキラキラと輝いている。
高市と須藤はそんな誉を見て、嬉しそうに歯を見せて笑った。
テスト明けの土曜日。
約束通り、ゆめか、誉、高市累、高市麗美、須藤の5人で海に来ている。
それぞれ水着(+パーカーなど)に着替えて出てきて、カラフルなパラソルが並ぶ砂浜を歩いている。
ゆめかモノローグ(テストも終わり、季節は夏)
(海です)
高市「おおーー!海!太陽!美女!夏だね!!」
須藤「元気だなー」
誉「暑い。溶ける」
麗美がゆめかに耳打ちをする。
麗美「ゆめかさん、今日は勝負の1日ですよ」
ゆめか(あはは、プレッシャーだなぁ)
(でも、誉の本音に触れるために)
(自分の気持ちに向き合うって決めたから)
ゆめか「うん、今日は幼馴染抜きにして考える」
ゆめか(それで前に進もう)
(どんな答えが出たとしても)
麗美「わぁ、今日のゆめかさん、かっこよくて素敵です…!私も協力するので、任せてください」
ゆめか(だ、大丈夫かな…)
麗美は自信満々にウインクをしていたが、ゆめかは不安を覚えた。
◯海・パラソルの下
陣取ったパラソルの下で、高市塁はスマホで海の写真を撮り、須藤は泳げない麗美の浮き輪を膨らませ、誉は暑さのあまりビニールシートで水を飲んでいた。
麗美は鏡を見たりバッグを漁ったりしていて、ゆめかは初めての海イベントに「わぁ…」とキョロキョロしている。
カシャカシャ(写真を撮る音)
高市「いいねぇ海!」
誉「っていう奴の気が知れねぇ。暑すぎだろ」
既にはしゃいでいる高市に、誉はすかさず死んだ顔でツッコむ。
誉「須藤はなにやってんの」
須藤「麗美の浮き輪準備。ないと溺れるから」
須藤が話しているところへ麗美がやってきて、ラッシュガードを脱ぐと、須藤に日焼け止めを渡しながら言った。
麗美「颯来!背中塗って~?」
須藤「ん、あとちょっとだから待って」
須藤は浮き輪のほうを見ながら返事をした。
浮き輪が完成して、麗美の方を見た須藤は、見事に固まる。
麗美「ど?可愛い?」
麗美はくるり、と一周して、口元に人差し指を当てながら聞く。小悪魔的なあざといその仕草さえ、麗美がやれば可愛いを上塗りするだけだ。
固まって言葉を発しない須藤に、麗美がもう一度聞こうとする。
麗美「ねえ」
麗美「可愛い?」
須藤「可愛い」
麗美の質問と重なった須藤の答えに、麗美は照れながらも満足そうに笑う。
ーーパンパン(両手を叩く音)
高市「はいはい、兄いますよー」
パンパン、と手を叩く音がしたかと思うと、高市塁が二人の間に、すっと入ってきた。
兄に邪魔された麗美はムッとしながらも、一部始終を文字通り無表情で眺めていた誉と目が合うと、ニヤリとした顔になり、わざとらしく言った。
麗美「橘高誉、暇ならゆめかさんの背中も塗ってあげてよ。まだだと思うから」
キョロキョロと海を見ていたゆめかは、自分の名前が聞こえてきて、ハッとして麗美の方を見る。
そして、麗美がウインクしてきたのを見て、嫌な予感が的中したことを悟った。
誉「背中、塗る?」
ビニールシートに座っていた誉は、ゆめかの方を見上げて聞く。
ゆめか(麗美ちゃん~~!協力ってこういう…!)
ゆめかは涙目になりながらも、今日の目的のため、と思って頷いた。
ゆめか「お、お願いします…」
誉「ん、貸して」
手を差し出した誉に、取り出した日焼け止めを渡すと、ゆめかは誉が足を広げて座っている間に、ちょこんと正座で座る。
ゆめか(幼馴染抜き…幼馴染抜き…)
誉「………」
ゆめか(幼馴染抜き…で、これは、無理では?!)
誉「………ゆめか?」
誉は困ったような表情をしているが、ゆめかはパニックに近く、それどころではなかったので気づかない。
誉は日焼け止めを置くと、ゆめかの後ろから手を回し、ゆめかが着ていたパーカー型のラッシュガードのジップを下ろす。
ゆめか「!!」
ゆめかが驚いてビクッと肩を震わせて振り向くが、誉は構わず一番下まで下ろすと、肩から後ろにするんとパーカーを落とす。ゆめかが袖を通しているため、そこでかろうじて止まっている。
誉「着てたら塗れない」
ゆめか「……っ」
ゆめかはそこで恥ずかしさが限界に達して、立ち上がると、ダッと海の方に走って逃げる。
◯海・砂浜と海の境目くらい
突然パラソルから猛ダッシュしてきたゆめかに、周りに遊びに来ていた人たちからの注目も集まる。
ゆめか(あ~バカバカ)
(これじゃ何も変わらないよ)
(というか)
ゆめかは肘から下にだらっと垂れたラッシュガードの袖口をぎゅっと握る。
ゆめか(もう)
(答え出てるかもしれない)
(ちゃんと確かめなきゃ)
ゆめかが戻ろうとしてUターンすると、どんっと男にぶつかった。
ゆめか「あ、すみません」
ぶつかった男「……いや、こちらこそ」
日差しが眩しくて、ゆめかはその男の顔がよく見えないまま、頭を下げた。その男は数秒ゆめかを見ていて不思議に思ったものの、その男の後ろから誉の声がすると、男は去っていった。
誉「ゆめか!」
誉は去っていった男の方を一瞬にらんでいたが、すぐゆめかのラッシュガードを肩まで戻し、フードまで被せた。
誉「急に1人で行かないで。心配する。…俺のせいなら謝るから」
ゆめかはブンブンと首を横に振る。
ゆめか「ちがうの、誉は悪くない」
その返事を聞いた誉は、ゆめかに手を差し出す。
誉「触っていいなら、手貸して」
ゆめかがそっと手を置くと、そのまま誉がゆめかの手を引いてパラソルに戻る。
◯海・パラソルの下
二人がパラソルに戻ると、高市兄妹と須藤は3人でアイコンタクトをする。
高市「おかえりー」
麗美「もう準備できたから3人で先に遊んでるね」
須藤「終わったら来いよ」
そう口々に言って、3人はパラソルを去り、ここにはゆめかと誉だけになった。
ゆめかと誉は立ったまま、向かい合っている。
ゆめか「………」
誉「………」
誉「…また脱がす?」
ゆめかはシュバババッと音が聞こえるかのように、素早い動きでフードを後ろにやり、ラッシュガードを自分で脱ぐと身体の前に持って、誉に背を向けて体育座りで座った。
誉も続けて後ろに座る。
ゆめか「…逃げたのは誉のせいだよ」
ゆめかが膝に顔を埋めて言うと、ポニーテールにしていた髪の束がぱらっと顔の横に落ちる。
ゆめか「誉がすること、誉が言うこと、全部恥ずかしくなったから。ごめんね」
ゆめか「…でも。いまも死ぬほどドキドキしてるし、死ぬほど恥ずかしいけど、嫌じゃないから。えっと…、さ、触って?」
ゆめか(っなんか、この言い方だと変態みたいだけど)
ゆめかが言いたいことを全部言って、顔を埋めたまま耳まで赤くしていると、誉は背中に触れるか触れないかくらいのキスをした。
ゆめかは相変わらずビクッとしたけれど、もう逃げたりはしなかった。
ゆめか(…今のなんだろ?)
誉「許可出たから触っただけ」
ゆめかの疑問が聞こえていたかのように、誉が答える。
ゆめか「う、うん?」
そのまま誉がゆめかの背中に日焼け止めを塗っていく。
ゆめか(早く終わって~)
ゆめかが目をぎゅっとつむって耐えていると、調子の戻った様子の誉が耳元で追い討ちをかけてくる。
誉「ねぇ、いま、俺に触られてドキドキしてんの?」
ゆめか(ほんとはとっくに分かってた)
(だから気づかないふりをして逃げてたの)
ゆめかモノローグ(幼馴染抜きにしたら)
(残るのは一つだけ)
ゆめかは膝に埋めていた顔を上げ、目を開けて、キッと誉を睨むようにして言う。
ゆめか「してるよバーカ」
ゆめかモノローグ(好きな人)
誉は嬉しそうに笑っていた。
◯海・海辺
周りの注目を集めていたゆめかと誉がパラソルから出ると、耳を澄まして遠巻きに見ていた周囲の人たちがなぜか顔を赤くしていた。
周囲の人A(青春だなぁ)
周囲の人B(なんかエロかったな)
周囲の人C(美男美女で羨ましい)
2人はそれに気づかず、高市兄妹と須藤たちが遊んでいた海辺に合流する。
浮き輪でプカプカ浮いていた麗美は、さっと海を出て、ゆめかに近づいて腕を取る。麗美は男子から距離を取り、足首だけ海に浸かるくらいのところにゆめかを誘導すると、心配そうに声をかける。
麗美「ゆめかさん…」
ゆめか「麗美ちゃん、さっきは驚かせてごめんね…私、誉のこと好きだってちゃんと分かったよ」
ゆめかは、麗美にだけこそっと報告をすると、麗美は両手を握りしめ、顔をぐいっと寄せて確認をしてくる。
麗美「…!ちゃんと1人の男としてって意味ですよね?!」
ゆめか「うん」
ゆめかモノローグ(この幼馴染の世界を守りたかったけど)
(1度壊してみよう)
(それでまた新しく始めればいい)
ゆめか「誉から離れようとするのはもうやめる」
ゆめかモノローグ(必要なのは)
(逃げない覚悟)
ゆめかは笑顔で答える。
誉(さっきゆめかとぶつかった男…)
高市と須藤は海から上がると、考え事をしていた誉のところへ行く。
高市「どした?いい感じになったと思ったけど、難しい顔して」
誉「いや、ちょっと」
誉「…つーか、さっき馬鹿にして悪かったな」
高市「ん?」
誉「やっぱ海いいわ」
考え事をやめて、海の方を見た誉の視線の先には、笑顔のゆめかがいた。透けるミルクティー色の髪が太陽に反射してキラキラと輝いている。
高市と須藤はそんな誉を見て、嬉しそうに歯を見せて笑った。