孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
「真絋?どうし━━━━」
瑛茉が真絋の顔を覗き込むと、そのまま口唇を奪うようにキスをされた。

「んんー!!?」
びっくりして、もがく瑛茉。
突然の真絋からの、貪るような激しいキス。

「はぁ…
ごめんね…急に…」

「はぁはぁ…ん、ううん…
でも、どうして…?」

「………嫉妬…したから……」

「え?」

「だって…嬉しそうに富根くんのこと話すんだもん」

「………」

「………」

「………えーと…ご、ごめんね!
もう、話さないから!ごめんなさい!」

「ううん。僕こそ、ごめんね。
僕が勝手に嫉妬しただけだから。
…………おかしいな…今までこんなことなかったのに…」

「え?」

「今までは付き合ってる子のことで、ヤキモチ妬くことはあった。
でも、こんな感覚初めてで……
ヤキモチよりももっと酷い、嫉妬心なんて。
僕、どうしちゃったんだろ……」

真絋自身が、一番戸惑っていた。
基本的に穏やかな真絋。
いつも微笑んでいて、優しい男性だ。

真絋は、あまり人に嫉妬することがない。

何でも器用にこなせるからというのもあるが、嫉妬をしたところで、自分が惨めになるだけだからだ。

なのに、瑛茉が嬉しそうに自分以外の男の話をしているのを聞いただけで、言葉にできないムカつきが襲ってきたのだ。

“瑛茉は、僕のだけのモノ”
という、やりきれない独占欲が膨れ上がったのだ。


「私も、こんなの初めてだから、どうしたらいいかわからないんだけど……
でも!もう、真絋の前で秀晃くんの話はしないようにするね!」

“真絋に嫌われたくない”

その一心で、瑛茉は言い聞かせるように真絋に言った。


そして、帰りの車の中。
とても暗い車内。

どうしても、口数が少なくなる。

好きな気持ちが、時間と共に膨れ上がり“離れたくない”と思っていた。

「真絋?」

「ん?」

「どうしたの?」

「あのね。
寄り道して帰らない?」

「え?うん、いいよ。
でも、真絋は仕事早いでしょ?
私は夕方からだから、ゆっくりだけど…」

「大丈夫だよ。
それよりも、まだ一緒にいたいから」

真絋は、瑛茉のアパート近くの公園の駐車場に車を停めた。
そして瑛茉に“後ろに移動しよ?”と言って、後部座席に移った。

ぴったりくっついて、真絋が瑛茉の肩を抱く。
瑛茉の頭を自分の肩に乗せて、その瑛茉の頭に自分の頭を乗せた。

「しばらくこのままね!」
そう言って、しばらく二人はくっついていた。
< 11 / 62 >

この作品をシェア

pagetop