孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
店の外にある、喫煙所。
案の定、真絋、秀晃、時康がいた。

「見て見てー、グレーの服の人!」
「ほんとだー!ヤバッ!カッコ良すぎ!」

(やっぱ、真絋のことだ。
そりゃそうだよね……(笑))

「あ、左手!」
「ん?」

「指輪、してる」
「……ってことは、既婚者かぁ…」

「まぁ、いるよね…奥さん」
「なんで私達、ガッカリしてんだろ?(笑)」

「どんな人かな?」

「そりゃ、美人よ!絶対!」


瑛茉はそこまで聞いて、個室まで戻ろうと踵を返した。
左手の薬指の結婚指輪に触れる。

(まさか、私みたいな女だなんて思ってないだろうなぁ……
………………
……あ、ヤバい…泣きそ…)
瑛茉は、天井を見上げた。

涙が溢れないように。

「真絋の言う通りだ……」
(私、最近よく泣くようになったなぁ…)

「大丈夫、大丈夫…
私は、真絋の奥さん!」

「…………何言ってんの?瑛茉」

「へ?あ、衣音ちゃん、野花ちゃんも」

「瑛茉ちゃんが遅いから、なんかあったのかと思って迎えに来たの」

「あ、ごめんね!
その……迷っちゃって!」

「「は?」」

「トイレから部屋まで、真っ直ぐなのに?」
「迷いようがないよね?」

「ほら、部屋に戻ろ?」

「「うん…」」
衣音と野花が、顔を見合せ首をかしげた。



一方の真絋達━━━━━━

「北三条ってさ」
「んー?」

「退いたりしなかったの?」

「は?」

「瑛茉の左目」

「は?退く?」

「鳥井も」

「ビックリはしたかな?」
「俺は、瑛茉ちゃんの左目を見たことないよ。
話だけ」

「へぇー、最初は退くだろ?あの傷痕」

「退く…?
……………退くってことはないかな?
驚愕って言葉が、合ってるよ」

「そんな酷いの?」
時康が少し興味があるように聞いた。

「酷いなんてもんじゃないねぇよ。
こんな風に、縦一文字に傷痕がある。
うーん……男なら、まぁ…酷い喧嘩でもしたんかな?ってな程度で済む。若気の至りみたいな。
でも瑛茉は、女だからな。
やっぱりどっか、偏見って持つだろ?」
秀晃が、自分の左目を瞼から下に指でなぞる。

「そうだね」
「まぁ、そうだな」


「俺は正直、初めて見た時退いた。
“うわっ…!?”って」
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