孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
「傷痕を見るより先に、瑛茉の笑顔に惚れたからかな?
ほんと、綺麗だった。
あんなに綺麗な笑顔、見たことなかった。
表現が変だけど、天使の微笑みみたいな?
“この子を手に入れたら、僕はきっと幸せになれる”って思った。
だから傷痕を見ても、退いたりしなかった。
そんな感情よりも、瑛茉のことが知りたくて堪らなかった」

「そっか!
わりぃ、変なこと聞いて」

「ううん。
それに、僕にもあるし」

「「え?」」

「傷ってゆうか……罪。
瑛茉には言えない、軽蔑されるような罪」

「北三条?」
「………」

「もし仮に瑛茉が“天使”なら、僕は“死神”だよ。
━━━━━ほら、戻ろ?」
切なく呟くように言って、煙草を灰皿に潰し歩き出した。

「なんなんだ?
鳥井は知ってんの?」

「あ、まぁ…
俺、真絋のこと高校ん時から知ってっから」

「………へぇー」

「聞いたら、それこそ“退く”と思う。
今の真絋からは想像出来ないから」


秀晃が纏めて会計をしているため、店の外で待っている真絋達。

「瑛茉、幸せになりな!」
「うん!ありがとう!
鳥井さんと野花ちゃんも、ありがとうございました!」

「うん!
真絋のこと、よろしくね!」
「はい!」

「あ、さっきのカッコいい人だぁ」
「ほんとだ!」
先程の女性達が、出てきた。

咄嗟に真絋の服を握り、前髪に触れる瑛茉。

「ん?どうしたの?」
真絋が瑛茉の頭を優しく撫でた。

「う、ううん!」
瑛茉は、心の中で“大丈夫。真絋は私の旦那さん”と必死に言い聞かせていた。

「ラブラブね!」
「フフ…熱いなぁ~(笑)」
衣音と野花が、クスクス笑っている。

秀晃が出てきて、そこで解散する。
「じゃあ、また!」


そして、自宅マンションに帰った真紘と瑛茉。

「素敵な食事会だったね!」
「うん、そうだね!」

「幸せだなぁー、こんな風に祝ってくれるお友達が増えて!」
「フフ…」

「今度、鳥井さんに真紘の学生の頃の話とか聞きたいなぁー!」

「━━━━え……?なん…で!?」
思わず、瑛茉の肩を掴み責めるようになってしまった真紘。

「ちょっ…真紘、痛いよ…」
「あ!ご、ごめんね!」

「真紘?どうしたの?」
「瑛茉こそ、どうして?
どうして、僕の学生の頃のことなんか知りたいの?」

「え?だって、きっと…素敵だったんだろうなぁって思って……!」

「………そんなことないよ…」
切なく瞳を揺らし、ポツリと言った真紘。
続けて言った。

「“過去のことなんて”どうでもいいでしょ?
未来のことを考えよ?」

そう言って、もう何も言わせないように瑛茉の口唇を塞いだ。
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