孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
「━━━━えー、私はやだなぁー」

衣音が声を張り上げるように言った。

「衣音…ちゃん?」

「え?衣音、なんで?」
「なんでー?」

「だって、瑛茉と旦那って二人でいるとラブラブなんだもん!
完全に二人の世界に入っちゃうってゆうかー
とにかく、見てるこっちが恥ずかしくなるんだもん!
みんな、それでもいいの?」

「えー」
「それはちょっとやだなぁ…」

「でしょ?
写真で我慢しな!」

衣音のおかげで、写真を見せるだけにとどまった。
瑛茉は、ホッと肩を撫で下ろした。


「━━━━瑛茉、ごめん!」
その後、トイレにいる瑛茉に謝罪をしてきた衣音。

「え?」

「私、つい調子乗っちゃった……!
瑛茉が幸せなのが嬉しくて、つい……
瑛茉は、嫌だったよね?
真絋くんのこと、みんなに知られるの」

「え?あ…
嫌ってゆうか……どうしても悪い方に考えちゃって……」

「ん?」

「真絋の写真見て、みんな“つり合ってない”って思うんじゃないかとか、真絋に惚れて取られたらどうしようとか……なんか、そんなことばっか考えちゃって……
自信持たなきゃって、頭ではわかってるんだけど……」

「そっか…」

「でも、さっきはありがとう!
衣音ちゃんのおかげで、会わせずに済んだから」


「………でも、堂々と紹介できるようになりたいな……」
個室に戻りながら、瑛茉がポツリと言った。

「そうね…
でも、瑛茉」

「ん?」

「私は正直、瑛茉の苦しみはわからない。
傷を負ったことがあるわけじゃないから。
でも瑛茉が自分のことを卑下したら、真絋くんのことも卑下してるみたいに感じる。
だから“真絋くんのために”卑下するのやめない?」

「真絋のために?」

「そうよ!真絋くんのため!」

“瑛茉、自分自身のこと卑下しながら傷ついてるもん。
そんなの、見たくない。
誰だって、大好きな人が目の前で傷ついてるのなんて、見たくないでしょ?”

「…………うん、そうだよね!
よし!
“卑下しない”」
瑛茉は前に真絋が言っていたことを思い出し、自分に言い聞かせるように拳を握りしめた。


そして解散になり、店の前で別れる。
「瑛茉、私達と帰ろ?」
秀晃と衣音が声をかけてくる。

瑛茉はスマホを操作していて、真絋からのメッセージを受けていた。
「あ、真絋が迎えに来てくれるみたい。
だから、大丈夫!ありがとう!」

秀晃と衣音に微笑むと、二人は“じゃあ、安心だね”と言い仲良く店を後にした。
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