孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
「………ヤス、帰ろ?」
無表情で、淡々と言う真絋。

「おぅ」
時康も頷き、二人は立ち上がった。

「え?
もっと話しましょうよぉ!」
そんな二人を見上げる、真奈。

「………君、言ったよね?」
真絋が真奈を鋭い視線で見る。

「え?」

「瑛茉がなんで、惚れられるのかって。
悲劇のヒロインとか、同情とか」

「え?はい」

「“そんなことも”わからないの?君」

「え?」

「お前さぁ。
男は寄ってくるけど、彼氏いないだろ?」
時康も鋭い視線で見て言う。

「え……」

「一回ヤったら終わり。みたいな!」

「………」
時康の言葉に、口をつぐむ。

「あ!図星だぁー」
真絋がケラケラと笑う。
そして、続けて言った。

「僕達は、君がどうなろうと関係ないけど……
“なんでイケメンが瑛茉に惚れる理由”
それがわからない限り、君の前には素敵な人は現れないよ」
「だな(笑)」

「“ここのコーヒーは”美味しいから、愛する瑛茉と来るね!」
「俺も、愛する野花と来よっと!」
そう言って真絋と時康は、去っていった。



「…………そうゆうことだったんだ…」
「ん?」
会社に向かいながら真絋がポツリと呟き、時康が真絋を見た。

「瑛茉、この前の飲み会の時ね。
あの真奈って女のことを紹介してくれたんだけど、凄く悲しそうだったんだ。
なんか、それから様子もおかしかったし」

「そっか。
まぁ、あの女に取られたみたいなもんだもんなぁー
不可抗力にしても。
真絋のことも“取られる”って思ったのかもな」

「そんなの、あり得ないのに……」

「だな(笑)
もう、ベタ惚れもいいとこだもんなぁー真絋。
惚れてるっつうか、ハマってるみたいな!
依存に近いかも?(笑)」

「うん。
僕もう、瑛茉がいないと生きてけないもん」

「フフ…だからって、束縛とかすんなよ?」

「わかってるよ!
この前の飲み会も、ここまで“行かないで”って出そうになったのを我慢したんだから!」
喉元を押さえ言う。

「フッ…そっか(笑)
まぁ、でも…瑛茉ちゃんは凄いよね……!」
「ん?」

「俺達は、大切な彼女や嫁さんに“嫌な部分”を見せられない。
俺も……詳しいことは野花に話せてないから。
嫌われるのが怖くて」

「そうだね……」

真絋と時康は、左耳に同じ軟骨ピアスをしている。
それに触れながら、切なく言った。
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