孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
「━━━━瑛茉!!!」
「瑛茉ちゃん!!?」

「あ…真紘……鳥井さんも……
ごめんなさい、突然…」

「怪我したって、大丈夫なの!!?」
「うん。
お店の人が慌てて救急車呼んでくれただけで、大したことないの。
頭打ったけど、異常ないし。
手の平を擦りむいただけ」
手の平を見せると、瑛茉の足元に跪いた真紘が優しく包み込むように握った。

「瑛茉ちゃん、誰に殺られたの?」
時康も同じく真紘の横に跪き、瑛茉を見上げる。

「あ…えーと……
大学の時の同期に、久しぶりに会って……
あ!でも!
大学の時は、あんまり接点はなかったんだけど……
彼は、その…暴走族に所属してた人で、講義もほとんど来てなかったし…
ほら!私ってこんな容姿だから、変な意味で目立ってたの。
それで、彼みたいな知り合いもいて……」

「誰?その人の名前、教えて?」

「え?ま、真紘…?」
見たことのない、真紘だった。

甘さも、優しさも、穏やかさも……何も感じられない、冷たくて、黒い、恐ろしい雰囲気。

握られている手からも、凄まじい強さが感じられる程に……

「瑛茉、お願い。教えて?
誰が、僕の瑛茉を、傷つけたの?」

「さ、さ、斎東(さいとう)くん」

「斎東?」
「真紘、斎東ってまさか…!?」

「瑛茉、それって…斎東 和友(かずとも)?」

「……う、うん…」

「真紘」
「ん。そうだね。
━━━━瑛茉、とりあえずお家帰ろうね」

そのまま手を引き、病院を出る。
駐車場に向かう、三人。


嫌な予感がする━━━━━

どうしてかわからないが、とてつもない嫌な予感が。

“今の北三条 真紘は、別人なんだよ!”

和友が言った言葉だ。

「真紘!」
「ん?どうしたの?
もしかして、どっか痛い!?」

「私!
知りたくないから!」

「え?」

「真紘が話したくないことは、知りたくない!
私は大丈夫だから、無理しないで!」

「瑛茉…」

「斎東くんに、言われたの。
真紘は、別人だって。
でも私、知りたくない!
真紘、言ってたよね?
“過去のことはどうでもいい”って!
私も、今の真紘だけでいい!
未来のこと考えてたい!
斎東くんにそう言ったら、無理矢理どこかに連れて行かれそうになったからおもいきり振り払ったら、転んだの。
だから、大丈夫だから!」

何か、恐ろしいことになりそうで、瑛茉は必死に言い聞かせるように言った。
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