孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
マンションに帰りつき、ソファに並んで座っている真紘と瑛茉。

「━━━瑛茉」
真紘が瑛茉の手を取り、包み込むように握った。

「ん?」

「聞いてくれる?」

「え……でも…」

「なんか…ちゃんと話さなきゃって思ったから」

「………わかった!
私も、受けとめるよ!
大丈夫!
真紘も、私のこと受け止めてくれた。
私も、真紘を信じてる!」

真紘の決意のような真っ直ぐな目に、瑛茉も意を決したように真紘に向き直った。


「僕には、高校の時に親友が二人いた。
一人は、ヤス。
もう一人が、圭輔って奴。
カッコ良くて、頭も良くて、優しくて、穏やかで、スポーツ万能。
ほんと、非の打ち所がない男だった」

「真紘みたい!」

「ううん!
それは……今僕が、圭輔を真似てるだけ。
高校の時は、正反対だったんだよ?」

「そう…なの?」

「確かに、女の子にはモテた。
カッコいいって言ってもらえることも多かった。
勉強も出来たし、スポーツも何でも一通り出来た!」

「ほら!やっぱそうだ!」

「でも………優しくなんてない。
他人興味がなくて、生きている意味なんかなくて、いつも喧嘩ばかりしてた。
僕ね。
喧嘩で負けたことなくて、しかも一度喧嘩を始めると、相手が降参してきても最後までなぶってた。
“冷酷”って言葉がぴったりなくらいに」

「え……」
全く、想像がつかない。

「高校に入学してすぐに、三年の先輩に喧嘩売られてさ。
なんか…その先輩の彼女が僕に一目惚れしたとかで、告白されたのを振ったら突然。
返り討ちにしたんだ。
そしたら、あっという間に色んな人達に喧嘩売られるようになって、その人達全員を返り討ちにしてた。
その頃、僕には信じられる人はヤスと圭輔だけだったんだ。
丁度、じぃちゃんが亡くなった時期でもあって。
ヤスと色んな奴等を返り討ちにしている時だけが、喧嘩してる時だけが“生きてる”って感じられてた。
圭輔は、そんな僕達をいつも止める役だったんだ。
とにかく圭輔は、争いが嫌いで。
それでも僕とヤスは喧嘩に明け暮れていて、段々仲間が増えていった。
その中に、和友もいた。
━━━━━━高校二年の時。
仲間の一人が、ヤクザに目をつけられてボロボロになぶられたんだ。
僕とヤスが、仕返しに向かうことにした。
でも、相手はヤクザ。
ある意味、プロみたいなもんでしょ?
あっという間に返り討ちにされた……」

「そう…だったんだ……」

「そこで、諦めればよかった……」

「え?」

「でも僕、悔しくて……
それまで、負けたことなかったから。
負けたことが悔しくて、また後日に一人でそいつ等の所に行ったんだ」
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