孤独だった君に、僕の全身全霊の愛を…
三人は、ただ…笑い合っていた。
何気ないことで笑い合って、じゃれ合っていた。

『━━━━真紘』
圭輔が話していた言葉が蘇ってきた。


『ん?』

『もう、やめろよ。喧嘩なんか』
『どうして?』

『争いは何も生まないから』

『そんなのわかんない』

『その真紘の強さを、大切な人を守るために使いなよ!』

『は?
ヤスと圭輔を守るってこと?
でも二人は、自分の身くらい守れるでしょ?』

『そうじゃない。
これから先、好きな人が出来るかもしれないだろ?
信頼できる友達が出来るかも?
そんな人達や、弱い人達のために……な?』

『………』

『僕は、そんな強さがほしい。
大切な人を守るための力。
これから先、大切な人が現れたら……
その人を全身全霊で、守りたい!
そんな、大人になりたい━━━━━━』



「…………圭輔。
僕は、圭輔みたいに出来ないよ………
瑛茉を、傷つけちゃった」
左耳のピアスに触れ、呟く真紘。

高校卒業して、真紘は生まれ変わったつもりで“圭輔のように”生きていこうと決めた。

亡くなった圭輔の代わりに、圭輔のために。

大切な人が出来たら、その人を全身全霊で愛し守ろう。
自分の強さを、大切な人のために使おう。


そして━━━━瑛茉に出逢い、自分自身に誓った。

“傷つけられてきた孤独な瑛茉を、全身全霊で愛し守ろう”と━━━━━

でも結局、自分が瑛茉を傷つけてしまった。

「ごめんね、瑛茉。
ごめんね……」

きっと、嫌われた。
もう、瑛茉の傍にいない方がいい。

こんな穢れた自分が瑛茉の傍にいたら、瑛茉も汚してしまう。

でも━━━━

「嫌だ…嫌だ…嫌だよ…」

離れるなんて、考えただけで苦しくて死にそうだ。


瑛茉と別れるなんて、離れるなんて、できない━━━━

傍にいたい。
こんな狂おしいくらいに愛した人は、瑛茉だけ。

僕が瑛茉に“命”を与えたんじゃない。

瑛茉が僕に“命”をくれた。

守りたいと思わせてくれた。


真紘は、スクッと立ち上がった。

「瑛茉にちゃんと気持ちを伝えなきゃ!」

傍にいたい……いさせてほしいと。
守りたい………守らせてほしいと。

マンションに戻ろうと、走り出す真紘。

すると━━━━━


「え………」
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