この熱に溺れてしまいたい。



「……あ、小夜ちゃん」



でも、先輩が私を見つけてくれたことに喜んでいることが、何よりの証拠で。



「おはよう、ございます…」


「ん、おはよ」



先輩が、隣に並んでいた女の人をおいて私の元に駆けつけてくれたことに舞い上がっているどこかの私が、絶対“そうだ”って叫んでる。



「……っ!」


「…小夜ちゃんどうしたの?」


「っななな、なんでもないです……!」


「……ふーん」



ほら、先輩が近くにいるだけでこんなに意識しちゃってさ。


なんなの最近、どうしちゃったの私。




こんなの、嘘にできない。



でも私は臆病だから、まだ知らないふりをします。


先輩の横を通って教室に向かおうとすると、ぽそ、と耳の近くで小声で呟かれた。




「ー今日の放課後、いつものところで」


「……はい」



もう少しだけでいい。少しだけでいいから。



『ーーー私ひとりだけがいい』



そう思った自分にも、見ないふり。




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