聖女さまがいっぱい!(聖女ショートショート集)
 唐突に、彼女は託宣(たくせん)を得た。

 頭の天辺から足まで、雷を受けたかのような衝撃だった。

 頭の中に何者かの言葉が厳かに響く。

 ただちに少女は父母に言った。

「世界を浄化するために聖女になるべし、との神託を受けました。神殿に行きたいと思います」

 両親は最初、少女が冗談を言っているのだと思った。が、彼女があまりに真剣に言うので、一緒に神殿に確かめに行くことにした。

 この国では(まれ)に聖女が現れる。それは本人が託宣を受けたと申告して現れることが多く、その申告が神殿で認められればその者は聖女となる。

 街の神殿に行くと、なんだかざわざわしていた。いつもより人出が多いように思える。特に親子連れか多いように思われた。

 聞こえてくる話を総合すると、ここにいる少女全員が聖女候補なのだと言う。

 そんなばかなと、父親は思った。

 毎年、聖女候補は一人か二人、だというのに。



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