クールな甘音くんが、私推しの読み専になりました。
第一話 甘音くんに、秘密がバレた。
〇朝。1年C組の教室。
柿坂文乃は地味な見た目で小柄な女子高生。ぼんやりと教室を眺めている。
文乃(――同じクラスに、芸能人がいます)
視線の先、制服をオーバーサイズに着こなす、金髪ゆるパーマの長身男子が登校してくる。
文乃(甘音透琉、16歳。高校生ながら、事務所にも所属してる若手声優です)
モブ女子1「かっこいいよねー、同じ制服着てるはずなのに、なんであんなにオシャレなんだろ」
モブ女子2「声優なのにねー。でもあれは、ぜーったい実写もイケるタイプの人だよねっ」
モブ女子1「ねー。声もハイトーンで透明感があって。それでいて成績学年トップの超人。やばーっ」
文乃(そんな甘音くんの弱点と言えば、多忙すぎて授業以外はほぼ寝ていること。あとは……)
モブ女子3「あ、あの」
甘音「?」
モブ女子3「……甘音くん、おはようッ」
友達と一緒に勇気を出して声をかける女子。しかし。
甘音「……。……お構いなく」
ぺこりと軽く頭を下げた後は、目を合わせることなく、一礼して机に突っ伏す。その口調は、まさに他人行儀。
文乃(普通嫌われると思うけど。一周まわって遠くから眺める専用って、女子には受け入れられてます)
(まぁ、たしかに甘音くんて、頭おかしいくらいカッコいいもんなぁ。見てるだけでいいや……)
りん「文乃! おっはよーッ」
挨拶をしてきたのは、志摩りん。大きなスポーツバッグを背負ったポニテ女子。
文乃「あ、マリンちゃん、……おはよ……ふああ」
りん「甘音くん、今日も寝ながら輝いてるねー。って……アンタ、すごい顔してんな」
文乃「……そうかなぁ? 昨日は、3時間しか眠れなかったからかな……?」
りん「うわぁ大変だ。……執筆お疲れッ、……なんだっけ、ええと、あ、抹茶ココ……むぐッ」
文乃「ちょ、マリンちゃん、言わないでッ」
文乃(『抹茶ココア』は、私のネット小説投稿サイト上での作者名。……あと、ちょっとしたトラウマがあって、私が小説を書いていることは、周りの人には秘密です)