クールな甘音くんが、私推しの読み専になりました。
〇回想:モブ女子に釈明する文乃。
文乃『……つ、付き合ってません!』
『……め、めっそうもないし、……そもそも、友達でもないです!』
『……お、推しの件も、きっと何かのノリか冗談だと!』
回想終了。
りん「ごめんごめん。でも、なんか傍から見てると、自信なくなってさ」
文乃「……どういうこと?」
りん「……んー、やっぱ好きじゃね? みたいな?」
文乃「……マリンちゃん、本気で言ってる? 私と甘音くんだよ? 単なる陰キャ、陽キャよりもずっと深い溝があるよ?」
りん「でも、マジな話。……明らかに文乃に対する態度だけ違くない?」
文乃「……それは、甘音くんの距離の詰め方が、ちょっとアレなだけだよ。たまたま趣味?が私と合って、そのことで軽くやりとりするくらいだから……」
りん「……軽く、ねぇ……」
未だに疑いの視線を向けてくるりんに、文乃は手に持ったココアラテに口をつける。
文乃「…………まぁ、その、正直に言うとね。……やっぱり甘音くんって、すっごくカッコいいから。……正直、ほんの少しだけ、勘違いしそうになる……ことはあるよ?」
りん「お、それってやっぱり……」
文乃「……でも、違うと思うの、甘音くんは」
りん「?」
文乃「……みんなが思ってるより、甘音くんって私には小説の話ばかりしてる。単なるきっかけとかじゃなく、ホントに読み専なんだなっていうのが、滲み出てるの。……少なくとも、私の知ってる甘音くんはそう」
りん「……」
文乃「……だから、一人の読者として、純粋に小説の話がしたい。きっとそれだけじゃないかな?」
困った顔ではにかむ文乃に、りんは感慨深げな顔をして。
りん「…………文乃、ホントに甘音くんと仲良くなったんだね。……なんだろ、ちょっと文乃が遠いとこ行っちゃった気分……」
文乃「え……! どこにも行かないよ! 私、ずっとマリンちゃんと離れたくないッ」
りん「ヤダ何この子、可愛い!」
キャイキャイと女子同士でベタベタしてから、
りん「……で、肝心の小説の方は調子どう?」
文乃「う゛…………」
りん「あ、何も言わなくてもいいわ。……わかったから」
文乃「その……甘音くんの激励で、多少モチベーションは上がったんだけど、……やっぱり、拭えない停滞感?みたいな……」
りん「なるほどねー、そうですかそうですかー」
文乃「? なんでニヤニヤしてるの?」
りん「んーや。じゃあ、そんな文乃パイセンに、とっておきのアドバイスがあるけど、聞く?」
文乃「え、う、うん! ワクワク」
期待感を醸し出す文乃。そんな文乃にりんは爽やかな笑顔で言った。
りん「普通に……、相談してみればよくない?」
文乃「? 誰に?」
りん「――甘音くんに」