クールな甘音くんが、私推しの読み専になりました。



〇夜。文乃の部屋。ベットの上で布団に入ったままスマホを眺める文乃。

 画面に写っていたのは、動画共有サイトに投稿された、新作アニメの宣伝動画。そこには、制服よりもずっとオシャレで洗練された衣装を着た甘音が映っている。

甘音「……はい。ジャック・ウィック役の甘音透琉です!……今回みたいな役柄は個人的に初めてなので、毎回の収録をすごく楽しみにして参加させてもらってます。よろしくお願いします!」

 そこには、いつも学校で見せるクールな表情とは打って変わり、快活で熱気に溢れた若手声優の姿がある。

文乃(……甘音くん、また新しいアニメ出るんだ。……すごいなぁ。同じ学校で授業受けてるのに、ホント……信じられないなぁ……)




〇回想:りんの言葉

りん『……だってさ、甘音くん読み専なんでしょ? なら、ウチなんかより小説のことよくわかってると思うし。読む側ならでは意見ももらえるんじゃない? そもそも、クリエイターとしては、事務所に所属してるれっきとしたプロなんだしさー』

 回想終了。


 動画のコメント欄を見ると、『中の人カッコよすぎて草』『身長高ッ!2、5次元じゃん』『声もいいんだよなぁ……』など甘音を称賛するコメントがずらり。

文乃(……相変わらず、お洒落でイケボでカッコよくて…。完全に別世界の住人だよね。話しかけられるのすら、まだぜんぜん慣れない……けど)


〇回想:屋上、教室での甘音の言葉。

甘音『……面白かった』
甘音『あれから、キミの作品、――全部読んだ』
甘音『……天才』
甘音『――俺の、推し』

 回想終了。



文乃(……甘音くんが、私の小説のこと、もっと楽しいと思ってくれるなら……ッ)


 仰向けになり、赤くなった顔半分をスマホで隠しながら、文乃はギュッと手に力をこめた。


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