クールな甘音くんが、私推しの読み専になりました。


〇回想:文乃の小学生時代。学校で小説を書いたノートが、クラスの男子に見つかってしまった時。

男子1『何これぇー、お前が書いたの?』
文乃『うん……』
男子1『へぇー。じゃーちょい、借してッ』
文乃『えッ? ……あッ」
男子1『―――おい、みんなぁー、見ろよこれー、柿坂の小説だってぇー!」
文乃『……やめてッ、……かえ……して!』  
男子2『えー、なにこれぇ、『……好き。』とか、うわー、ヤバくね?」
女子『だよねー。マジないわー』

男子3『つか、――気持ちわる』

 ――回想終了。




〇昼休み。思い出すだけでよみがえる胸の痛みに、文乃、浮かない顔でお弁当タイム。

文乃「…………」
りん「今朝の、まだ、気にしてるんだ?」
文乃「……それは、……うん」
りん「でも、あの頃と違って、今はネットに読者もちゃんといるじゃん。……なんだっけ? ブクマ? とか評価? とか、たまに貰うんでしょ?」
文乃「……そうだけど、リアルで公表するのはぜんぜん違うよ」
りん「……ま、それもそうかぁ。けっきょくあれから、リアル男子も苦手なままだしねぇ……」
文乃「……う。……マリンちゃんのいじわる」
りん「ごめんて、よしよし。睡眠不足なのにね。で、進捗は?」
文乃「…………もうね、スランプ真っ最中。このままじゃ、更新オチちゃう」
りん「ありゃまピンチじゃん。今まで切らしたことなかったのにね?」
文乃「……そうなの。はああ……もーどうしよう」
りん「……この際、開き直って爆睡してみるとか?」
文乃「すっごく無責任」
りん「だってウチ、そもそも活字読めんしー? ……ま、とにかく無理しないように」



〇午後の授業中、文乃はひたすら眠気と戦っていた。

文乃(……うう、睡眠不足で世界史は……キツイよぅ……)

 失いかける意識をなんとかしようと、昔のことを思い出す。

小学生りん『……なんかよくわかんないけど、やめなよッ!!!!』

文乃(トラウマの時、私を唯一助けてくれたのが、マリンちゃん)
  (正直、趣味はぜんぜん合わないけど、ホントに優しくて。あれ以来、私が小説を書き続けてることを知ってるのは、マリンちゃんだけです)

 ついに瞼が重くなり、首から上がうつらうつらと揺れる。

文乃(……そうだ……小説……セリフ……考えなきゃ………考え……、…………)
文乃「………………すぅ……」






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