恋はひと匙の魔法から
「今日この後透子さんと会う予定なのですが、待ちきれずに来てしまいました。お兄様のお店も透子さんから話に聞いていて、一度お伺いしてみたかったんです。内装が素晴らしいと伺ってまして。なんでもデザイナーさんが手掛けられたとか」
「あ、そうですね。知り合いに頼みまして……」
「お知り合いにいらっしゃるんですか。素晴らしい人脈をお持ちですね。私は門外漢なので気の利いたことは言えないのですが、落ち着いた雰囲気で、こちらなら仕事が捗りそうだなと思ってつい見回してしまいました。今日は食事をいただく時間がなくて本当に残念です」
「い、いえいえ。今度またよければいらしてください」
普段よりも三割増で饒舌な、仕事モードの西岡のペースにのまれ、先程までの千晃の険呑さはすっかり鳴りを潜めている。
このまま誤魔化されて何事もなく終われるかもと、透子も胸を撫で下ろしていたのだが、続く西岡の一言でまたその場に緊張が走った。
「今日はお兄様にもご挨拶ができればと思っていたので良かったです。透子さんとはプライベートでもお付き合いをさせていただいておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
「……………………えっ?お付き合いって――――はっ?何?彼氏ってこと?え……透子、マジ?」
「あ……えーっと……」
まさかそんなことを暴露されるとは思っていなかった透子は、隣に立つ兄の追及の目から逃れるように視線を逸らした。
千晃に打ち明けると、ほぼ確実に親へもバレる。
それが透子は何より嫌だった。
ただでさえ「誰かいい人いないの?」と実家に帰るたびに結婚をせっつかれているのだ。彼氏がいると伝えたが最後、とにかく連れて来いとうるさく言われるのが目に見えている。
付き合い始めたばかりだし、つい先日、誤解とはいえ一悶着があったばかりだ。今は外野の声を気にせず純粋なお付き合いを楽しみたい気持ちが大きい。
西岡に手間を掛けることになるのでできれば避けたかったのだが――
「あ、そうですね。知り合いに頼みまして……」
「お知り合いにいらっしゃるんですか。素晴らしい人脈をお持ちですね。私は門外漢なので気の利いたことは言えないのですが、落ち着いた雰囲気で、こちらなら仕事が捗りそうだなと思ってつい見回してしまいました。今日は食事をいただく時間がなくて本当に残念です」
「い、いえいえ。今度またよければいらしてください」
普段よりも三割増で饒舌な、仕事モードの西岡のペースにのまれ、先程までの千晃の険呑さはすっかり鳴りを潜めている。
このまま誤魔化されて何事もなく終われるかもと、透子も胸を撫で下ろしていたのだが、続く西岡の一言でまたその場に緊張が走った。
「今日はお兄様にもご挨拶ができればと思っていたので良かったです。透子さんとはプライベートでもお付き合いをさせていただいておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
「……………………えっ?お付き合いって――――はっ?何?彼氏ってこと?え……透子、マジ?」
「あ……えーっと……」
まさかそんなことを暴露されるとは思っていなかった透子は、隣に立つ兄の追及の目から逃れるように視線を逸らした。
千晃に打ち明けると、ほぼ確実に親へもバレる。
それが透子は何より嫌だった。
ただでさえ「誰かいい人いないの?」と実家に帰るたびに結婚をせっつかれているのだ。彼氏がいると伝えたが最後、とにかく連れて来いとうるさく言われるのが目に見えている。
付き合い始めたばかりだし、つい先日、誤解とはいえ一悶着があったばかりだ。今は外野の声を気にせず純粋なお付き合いを楽しみたい気持ちが大きい。
西岡に手間を掛けることになるのでできれば避けたかったのだが――