恋はひと匙の魔法から
「どうしたんですか?!その手」
反射的に彼の手首を掴み、自分の元に引き寄せた。
指先と第二関節はほとんど全て絆創膏で覆われていて、手の平と甲にも何枚か貼られている。もはや生身の部分を見つける方が難しく、右手も左手ほどではないにしろ絆創膏が何枚か貼られていた。
しかも、そのどれもがよれていて、真っ直ぐ綺麗に貼られているものは一つも見当たらない。彼の不器用さが如何なく発揮されていた。
(一体何をどうやったら、こんな酷い有り様になるの……?)
よっぽど大掛かりなDIYにでもチャレンジしたのだろうか。木から切り出して新しい棚でもこしらえたとか。
満身創痍と呼ぶべき手を前に唖然としていると、掴んでいた手首がそっと引き抜かれた。
「これは別に大したことないから」
「えっ……でも……」
十分大したことある傷だと思うのだけれども、憮然とした面持ちで西岡はそれ以上何も語らなかった。
ギアを操作して車を発進させると、加速するエンジン音だけが車内に響く。
触れてほしくなさそうなのでこれ以上は何も言わないが、正直手の怪我が気になって仕方がない。ちらちらと横目で窺っていると、彼は前を見据えたまま苦笑を漏らした。
「そんな気になる?」
「だって、すごい大怪我じゃないですか」
「そこまで痛くないから平気だよ」
「うーん、でも……。何したらそんな風になっちゃったんですか?」
すると西岡は途端に唇を引き結び、低く唸った。それでも透子がジッと視線を送っていると、やがて重たい口を開いた。
「俺の家に着いたら分かるよ、まあ……」
このまま雨が降るんじゃないかと思うほどの湿ったため息を吐いた西岡は、肩を落としてまた渋面を作った。
一体何があるんだろう……と困惑しながら、透子は目的地に辿り着くのを待つのだった。
反射的に彼の手首を掴み、自分の元に引き寄せた。
指先と第二関節はほとんど全て絆創膏で覆われていて、手の平と甲にも何枚か貼られている。もはや生身の部分を見つける方が難しく、右手も左手ほどではないにしろ絆創膏が何枚か貼られていた。
しかも、そのどれもがよれていて、真っ直ぐ綺麗に貼られているものは一つも見当たらない。彼の不器用さが如何なく発揮されていた。
(一体何をどうやったら、こんな酷い有り様になるの……?)
よっぽど大掛かりなDIYにでもチャレンジしたのだろうか。木から切り出して新しい棚でもこしらえたとか。
満身創痍と呼ぶべき手を前に唖然としていると、掴んでいた手首がそっと引き抜かれた。
「これは別に大したことないから」
「えっ……でも……」
十分大したことある傷だと思うのだけれども、憮然とした面持ちで西岡はそれ以上何も語らなかった。
ギアを操作して車を発進させると、加速するエンジン音だけが車内に響く。
触れてほしくなさそうなのでこれ以上は何も言わないが、正直手の怪我が気になって仕方がない。ちらちらと横目で窺っていると、彼は前を見据えたまま苦笑を漏らした。
「そんな気になる?」
「だって、すごい大怪我じゃないですか」
「そこまで痛くないから平気だよ」
「うーん、でも……。何したらそんな風になっちゃったんですか?」
すると西岡は途端に唇を引き結び、低く唸った。それでも透子がジッと視線を送っていると、やがて重たい口を開いた。
「俺の家に着いたら分かるよ、まあ……」
このまま雨が降るんじゃないかと思うほどの湿ったため息を吐いた西岡は、肩を落としてまた渋面を作った。
一体何があるんだろう……と困惑しながら、透子は目的地に辿り着くのを待つのだった。