恋はひと匙の魔法から
幸せの絶頂のまま二人は寝室にもつれこみ、愛を交わした。
身も心も存分に愛でられた後、彼の胸に頬を寄せ、うとうとと微睡んでいたそんな時だった。
「そういえば、入籍はいつがいい?俺としては、透子の誕生日がもうすぐだから、そこがいいかなとか思ってたけど」
不意に繰り出された言葉に驚き、思わず顔を上げた。
目を丸くして、西岡を覗き見る。
「私の誕生日って、あと三ヶ月後とかですよ……?」
「うん、知ってる。それだけあれば、お互いの親にも挨拶できるし十分だと思うけど。ああ、でも指輪は間に合わないかもな。それとも結婚式と同じタイミングとかの方がいい?透子の希望に合わせるよ。でも入籍を後にするんだったら、先に一緒には住みたいな。ここは引き払おうと思ってるから、家は一緒に選ぼう」
先ほどまでオーバーヒートしていた脳には情報量が多すぎて、透子はあわあわと目を回しそうになった。
入籍、指輪、結婚式……引越し?
理解が追いつかない透子は、とりあえず一番気になったことを尋ねてみることにした。
「引っ越すんですか?ここでも十分広いと思いますけど。会社も近いし」
「二人で住むなら、もう一部屋くらいあった方がいいだろ。あと、流石にもう誰かが侵入したりとかはないだろうけど、念のため」
透子を抱き込んだまま、西岡は深くため息をついた。先日勝手に家に上がっていたという英美里のことを指しているのだと分かり、透子もまた苦笑いを浮かべる。確かに、引っ越した方が安心できるのは間違いない。
「まあ、今すぐ全部決めろって言いたいわけじゃないから、考えといて。とりあえず明日は指輪の下見でもしに行く?」
透子の頭をよしよしと撫でながら、西岡が優しく微笑む。
そう問われてようやく、透子の中でこの人と結婚するんだ、という実感が歓喜と共に込み上げてくる。
柔らかく優しい温もりに包まれて、透子はこの上ない幸福を感じながら頷くのだった。