恋はひと匙の魔法から
エピローグ

魔法にかけられて

「新郎新婦、ご入場です!皆様、盛大な拍手でお迎えください!」

 司会の女性が高らかにそう宣言すると同時に、扉がバッと大きく開け放たれた。眩いばかりのスポットライトに照らされ、満面の笑みを浮かべた新郎新婦が腕を組み、仲睦まじく披露宴会場に足を踏み入れる。
 その瞬間、ワッと歓声が上がり、会場に割れんばかりの拍手が響き渡った。
 時に冷やかしも混じった祝福の声に応えながら、二人はゆっくりとテーブルの間を縫うようにして高砂へと向かっていく。
 ライトを浴びて輝く白いドレスを身に纏った花嫁は、この会場中の誰よりも美しい。
 そんな幸せいっぱいの二人に拍手を送りながら、透子もまた祝福の言葉を投げかけた。

 今日は夕貴の結婚式。
 一番の親友の晴れ姿に、透子の心も浮き立っている。
 司会が読み上げる二人のプロフィールも笑顔で聞き入っていたのだが、ふと斜め前のテーブルで席に着く恋人の凛々しい横顔に目が移り、透子は自然と頬を赤らめた。
 上質な生地で仕立てられた三つ揃えを難なく着こなす姿に、透子は今日一日で数えようもないほど見惚れてしまっている。
 
 遼太とは今月から一緒に住み始めているのだが、彼が髪型をセットし終えた完璧な出立ちで洗面所から出てきた時に、透子は思わず小さな悲鳴を上げてしまった。あまりにも格好良すぎて。彼は大袈裟すぎると若干呆れていたが……。

 飽きることなくぽうっと後ろ姿を眺めていたところで、今度は新郎の雅人がマイクを取り、ウェルカムスピーチが始まった。緊張しているらしく、いつもよりも硬い声で畏まった挨拶を述べている。
 そこでようやく透子は視線を主役の二人に戻し、極度の緊張で表情が抜け落ちて訥々と話す雅人へ心の中でエールを送る。そんな透子の一連の様子を遼太が時折さり気なく窺っては微笑んでいたことに、透子は全く気付いていなかった。

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