恋はひと匙の魔法から
「俺も今度ラウンジで食ってみようかな」
「えっ、えぇっ?!西岡さんがですか……?」
「……そんな驚く?」
目を剥いて透子は西岡を見やる。彼は失礼な、と言いたげな目で透子を軽く睨みつけているが、彼の普段の昼休憩ぶりを鑑みたら、驚くのは寧ろ当然だ。
「いや、だって……。私、西岡さんが出先以外でお昼休み取ってるの見たことないですよ」
「透子の弁当を食べ出してからは、ちゃんと取ってる」
「本当ですか?十五分とか言わないでくださいよ?」
どうにも西岡の言が信用に足りず、試しに言ってみたら彼はスッと目を逸らした。
予想は的中していたらしい。
透子は膨れ面を作って西岡を胡乱げに見つめる。
「労働時間が八時間を超える場合は、一時間の休憩時間を取らなきゃいけないんですよ」
「俺は労働者じゃないから平気」
「もう。そういう問題じゃないです」
社長といえど人間であることに変わりはない。
たとえ労働基準法の範囲外であっても、適度な休憩をとって体を休めることは全人類共通で必要不可欠だというのに。
子どものような屁理屈を捏ねる西岡に透子は呆れ笑いを漏らした。
もちろん西岡の多忙具合は理解している。彼の仕事を代わりに請け負うこともできないため、透子にできるのは、こうしてチクチクお小言を言って彼が自ら健康を顧みるのを促すことくらいだ。
そうこうしている内に、ラーメンが運ばれてきた。
鶏油が浮かぶ、澄んだスープから立ち込める湯気を吸い込めば、食欲をそそる香ばしい醤油の匂いで肺が満たされる。
早速手を合わせ、麺を啜り、それからスープを一口。雨で冷えた体に温かいスープが染み渡る。
つるつると食べ進めていると、向かいからクスリと微かな笑い声が聞こえた。
「えっ、えぇっ?!西岡さんがですか……?」
「……そんな驚く?」
目を剥いて透子は西岡を見やる。彼は失礼な、と言いたげな目で透子を軽く睨みつけているが、彼の普段の昼休憩ぶりを鑑みたら、驚くのは寧ろ当然だ。
「いや、だって……。私、西岡さんが出先以外でお昼休み取ってるの見たことないですよ」
「透子の弁当を食べ出してからは、ちゃんと取ってる」
「本当ですか?十五分とか言わないでくださいよ?」
どうにも西岡の言が信用に足りず、試しに言ってみたら彼はスッと目を逸らした。
予想は的中していたらしい。
透子は膨れ面を作って西岡を胡乱げに見つめる。
「労働時間が八時間を超える場合は、一時間の休憩時間を取らなきゃいけないんですよ」
「俺は労働者じゃないから平気」
「もう。そういう問題じゃないです」
社長といえど人間であることに変わりはない。
たとえ労働基準法の範囲外であっても、適度な休憩をとって体を休めることは全人類共通で必要不可欠だというのに。
子どものような屁理屈を捏ねる西岡に透子は呆れ笑いを漏らした。
もちろん西岡の多忙具合は理解している。彼の仕事を代わりに請け負うこともできないため、透子にできるのは、こうしてチクチクお小言を言って彼が自ら健康を顧みるのを促すことくらいだ。
そうこうしている内に、ラーメンが運ばれてきた。
鶏油が浮かぶ、澄んだスープから立ち込める湯気を吸い込めば、食欲をそそる香ばしい醤油の匂いで肺が満たされる。
早速手を合わせ、麺を啜り、それからスープを一口。雨で冷えた体に温かいスープが染み渡る。
つるつると食べ進めていると、向かいからクスリと微かな笑い声が聞こえた。