『義理の弟クンがやって来た！』
第４話 義弟クンのお迎え
「ねえねえ、校門のところにイケメンの中学生が立ってるよ〜！」
「わあっ、陵南中《りょうなんちゅう》の制服だ。誰か出待ち？」
教室の窓から外を眺めていた親友のくるみちゃんと日菜子ちゃんが、わたしの肩を叩いてくる。
陵南中？
まさか……。
わたしが外を窺うと、こっちを向いた一樹くんの視線と合った気がした。
――あっ、一樹くんだ！
「あ、あの子、わたしの弟なの」
「うっそ〜！ 果歩って弟くんがいたんだ」
「すっごい格好いいね。モデルなみにスタイルいいし。果歩、今度紹介して〜」
「うっ、うん。今度ね」
わたしが帰り支度をしているあいだに、何人かの女子が一樹くんを見つけて噂をしている。
彼女たちは『見て見て、超イケメンがいるよ』だの『カノジョがうらやましい』とか『誰のカレシ〜？』とか『芸能人みたいじゃない？』などなど、一樹くんが視線を集めて、女子たちの黄色い声援を受けてた。
「お待たせ。一樹くん、……なんかごめん」
「よっ。お疲れ。……なにが？ ごめんって」
一樹くんに近づくと、パッと目線が私に向いて。
わたしは一樹くんにニイッって笑いかけられて、ちょっとどきっとした。
学校から二人で並んで歩くと、ちょっと不思議な変な感じ。
わたしは高校生で、一樹くんは中学生。
登校する時だって帰り道だって、いつもは違うのに。
背の高い一樹くん。
歩幅をわたしに合わせてくれてる。
なんか……やっぱり、やさしいね。
一樹くんは普段は無口で素っ気ない雰囲気をさせてる。
パパと橙子さんが再婚して同居する前は、だからすぐには気づけなかった。
その優しさに触れる前に、苦手だなんて思っててごめん。
わたしは胸のなかで、一樹くんにそっと謝った。
心のなかで思うだけじゃ、伝わるわけがないのに。
チャンスがあったらきちんと言葉にしょう。
「悪目立ちしちゃって。その、視線が痛くなかった？」
「ああ、まあ。……よくあるんで。果歩が気にしなくても大丈夫。それよか買い物、行こうぜ」
よくあるんだ……。
そうだよね。一樹くんは女子にモテそうだもん。
でも、それを鼻にかけてる感じもなくって。
「一樹くん、わざわざ来てくれてありがとう。次はわたしが陵南中《そっち》に行こうかな？」
「やだ」
「えっ？」
わたしが来たら困るのかー。
カノジョに間違わられたら、迷惑だから？
「果歩がうちの学校に来たら、心配なんだけど？ 果歩のことを好きになる奴が出てきたら面倒だから」
「ええっ！ そんな理由？ ないない、わたしなんてモテないもん」
「……果歩、自分が可愛いって自覚したほうが良いよ？ 男は狼だから警戒しないと」
「ふえっ……、か、かかかっ、可愛いってわたしが？」
「そっ。気をつけろよな」
立ち止まった一樹くんにじっと見つめられて、どきどきしてる。
だめだめ、一樹くんは義理でも弟なのに。
わたしはお姉ちゃんなんだから。
こんなどきどきを知られたら、きっと呆れられてドン引きされちゃう。
いけない、いけない。
「一樹くん」
「んっ？」
「今夜の晩御飯はなんにしようか？」
「そうだなあ」
「一樹くんが食べたいもの、作るから」
「俺は果歩が食べたいものでいいよ？」
うん、仲良しさんじゃないですか？ わたしたち。
一樹くんとの二人暮らし、どうなるか不安がなかったといえば嘘になる。
彼の気遣いや優しさを知った。
一樹くんがわたしの気持ちを大切にしてくれてるって感じる。
そう知って、わたしは心のなかがあたたかかった。
パパと橙子さんに意見してくれた時もそう思ったけど、一樹くんは人の気持がわかる人だ。
それに、自分の意見をきちんと伝える賢さと力強さもあって。
素敵だな。
わたしより一樹くんは一個年下だけど、わたしなんかよりよっぽどしっかりしてるよ。
そう気づいたら、勝手にわたし、ちょっとへこむ。
「ふふっ。果歩さ、さっきから百面相なんだけど」
「えっ？」
「果歩って心で考えてることが顔に出ちゃうタイプだよな」
「えっ？ うそっ」
「素直で、……良いと思うよ、そういうの俺。果歩ってあんまり嘘つけないだろ？ 隠しごとが出来なさそう」
「うん、それはたしかに当たってる。トランプでババ抜きとかすぐばれちゃう」
一樹くんが不意にわたしの頬に手を触れてきた。
ええっ！？
「なにっ？ ……一樹くん？」
「俺と二人で暮らすの不安？」
そういう一樹くんの顔は寂しそうだった。
綺麗な瞳が揺れていた。
「わあっ、陵南中《りょうなんちゅう》の制服だ。誰か出待ち？」
教室の窓から外を眺めていた親友のくるみちゃんと日菜子ちゃんが、わたしの肩を叩いてくる。
陵南中？
まさか……。
わたしが外を窺うと、こっちを向いた一樹くんの視線と合った気がした。
――あっ、一樹くんだ！
「あ、あの子、わたしの弟なの」
「うっそ〜！ 果歩って弟くんがいたんだ」
「すっごい格好いいね。モデルなみにスタイルいいし。果歩、今度紹介して〜」
「うっ、うん。今度ね」
わたしが帰り支度をしているあいだに、何人かの女子が一樹くんを見つけて噂をしている。
彼女たちは『見て見て、超イケメンがいるよ』だの『カノジョがうらやましい』とか『誰のカレシ〜？』とか『芸能人みたいじゃない？』などなど、一樹くんが視線を集めて、女子たちの黄色い声援を受けてた。
「お待たせ。一樹くん、……なんかごめん」
「よっ。お疲れ。……なにが？ ごめんって」
一樹くんに近づくと、パッと目線が私に向いて。
わたしは一樹くんにニイッって笑いかけられて、ちょっとどきっとした。
学校から二人で並んで歩くと、ちょっと不思議な変な感じ。
わたしは高校生で、一樹くんは中学生。
登校する時だって帰り道だって、いつもは違うのに。
背の高い一樹くん。
歩幅をわたしに合わせてくれてる。
なんか……やっぱり、やさしいね。
一樹くんは普段は無口で素っ気ない雰囲気をさせてる。
パパと橙子さんが再婚して同居する前は、だからすぐには気づけなかった。
その優しさに触れる前に、苦手だなんて思っててごめん。
わたしは胸のなかで、一樹くんにそっと謝った。
心のなかで思うだけじゃ、伝わるわけがないのに。
チャンスがあったらきちんと言葉にしょう。
「悪目立ちしちゃって。その、視線が痛くなかった？」
「ああ、まあ。……よくあるんで。果歩が気にしなくても大丈夫。それよか買い物、行こうぜ」
よくあるんだ……。
そうだよね。一樹くんは女子にモテそうだもん。
でも、それを鼻にかけてる感じもなくって。
「一樹くん、わざわざ来てくれてありがとう。次はわたしが陵南中《そっち》に行こうかな？」
「やだ」
「えっ？」
わたしが来たら困るのかー。
カノジョに間違わられたら、迷惑だから？
「果歩がうちの学校に来たら、心配なんだけど？ 果歩のことを好きになる奴が出てきたら面倒だから」
「ええっ！ そんな理由？ ないない、わたしなんてモテないもん」
「……果歩、自分が可愛いって自覚したほうが良いよ？ 男は狼だから警戒しないと」
「ふえっ……、か、かかかっ、可愛いってわたしが？」
「そっ。気をつけろよな」
立ち止まった一樹くんにじっと見つめられて、どきどきしてる。
だめだめ、一樹くんは義理でも弟なのに。
わたしはお姉ちゃんなんだから。
こんなどきどきを知られたら、きっと呆れられてドン引きされちゃう。
いけない、いけない。
「一樹くん」
「んっ？」
「今夜の晩御飯はなんにしようか？」
「そうだなあ」
「一樹くんが食べたいもの、作るから」
「俺は果歩が食べたいものでいいよ？」
うん、仲良しさんじゃないですか？ わたしたち。
一樹くんとの二人暮らし、どうなるか不安がなかったといえば嘘になる。
彼の気遣いや優しさを知った。
一樹くんがわたしの気持ちを大切にしてくれてるって感じる。
そう知って、わたしは心のなかがあたたかかった。
パパと橙子さんに意見してくれた時もそう思ったけど、一樹くんは人の気持がわかる人だ。
それに、自分の意見をきちんと伝える賢さと力強さもあって。
素敵だな。
わたしより一樹くんは一個年下だけど、わたしなんかよりよっぽどしっかりしてるよ。
そう気づいたら、勝手にわたし、ちょっとへこむ。
「ふふっ。果歩さ、さっきから百面相なんだけど」
「えっ？」
「果歩って心で考えてることが顔に出ちゃうタイプだよな」
「えっ？ うそっ」
「素直で、……良いと思うよ、そういうの俺。果歩ってあんまり嘘つけないだろ？ 隠しごとが出来なさそう」
「うん、それはたしかに当たってる。トランプでババ抜きとかすぐばれちゃう」
一樹くんが不意にわたしの頬に手を触れてきた。
ええっ！？
「なにっ？ ……一樹くん？」
「俺と二人で暮らすの不安？」
そういう一樹くんの顔は寂しそうだった。
綺麗な瞳が揺れていた。
