『義理の弟クンがやって来た!』
第6話 大切な家族
【一樹視点】
果歩と二人だけの生活は、思ったよりずっと楽しくて穏やかに過ぎていく。
ただ、ちょっと果歩が頑張りすぎているというか、お姉ちゃんとして張り切りすぎていて心配なんですけど?
母さんと悠人さんからは毎日テレビ電話がかかってくる。
『果歩も一樹くんも元気かい? 変わりはない? 困ったことがあったらすぐにパパたちに連絡しといで』
「大丈夫だよ、パパ。心配しないで。一樹くんと仲良くやっているから。橙子さん、パパが過剰に甘えていませんか? 突き放してもぜんぜん懲りないんで、パパに多少冷たくしても平気ですよ」
『ひどいなあ、果歩は〜。パパは果歩と離れてすごく寂しいのに』
『うふふっ。果歩ちゃん、悠人さんは寂しい寂しいって毎日言ってるのよ。一樹は問題ない?』
問題?
……あるっちゃあるけど、母さんには言わない。
だってこれは俺の気持ちの問題だから。
義理の姉ちゃんが可愛すぎる、なんならちょっと意識してっかもしれませんねとか言えっかよ。
俺、義理でも果歩と戸籍上は姉弟なんだよな。
「問題? なし」
『そう? 良かったぁ。仕事は順調だから思ったより早く日本に帰れるかもしれないわ』
「どうせ仕事がてら、新婚旅行気分で観光してんだろ?」
『ふふっ、まあね』
「良いじゃない、新婚さんだしね。あっ、お風呂が沸いたみたい。またね〜、パパ、橙子さん。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
『『おやすみ』』
今日も俺たちは二人で、イチャイチャな《《両親》》との会話を聞いてから、それぞれ風呂に入ったりあったかい飲み物を飲んだりして、気づけば夜が更けていく。
俺は果歩の姿を探す。
さっきキッチンで、明日の朝ごはんの支度をするって言ってたな。
「なあ、果歩? 俺ももっと家事とかやるからさ、あんまり根詰めてなんでも一人でやろうとすんなよ。……果歩? …果歩っ!」
俺はキッチンの床に倒れている果歩を見つけた。
「果歩! しっかりしろ。大丈夫か? どうした? どこか痛むか?」
とっさに倒れている人間を急に動かしたらいけないのを保健体育で習ったのを思い出して、俺は果歩に声をかけ続けた。
冷静になれ!
こういう時は焦っちゃだめた。
怪我はないか?
意識はあるか?
「果歩? 果歩」
熱があるような気がする。
意識はない。
果歩の体を横向きにして、脇に保冷剤をあててやる。
声をかけても何度呼んでも、果歩から返事はない。
……救急車を呼んだ方が良いかもしれない。
前に貧血で倒れた話は聞いたことがあった。
だめだ、俺。
無理させちまったんだ。
母さんが倒れた日を思い出して、血の気が引いてきた。
「果歩、今、救急車呼んでやるから死ぬなよ、頼む」
慣れない、子供二人だけの暮らし。
思った以上に果歩の負担になっていたかもしれない。
俺は自己嫌悪に陥っていくのを振り払った。
今は俺しか果歩を助けられないんだ。
「果歩。俺が助けてやるから」
穏やかに思えた日常が壊れるのは、些細な亀裂《できごと》からだ。
俺は果歩を……、失うわけにはいかない。
俺が果歩を守るって決めたんだ。
果歩と二人だけの生活は、思ったよりずっと楽しくて穏やかに過ぎていく。
ただ、ちょっと果歩が頑張りすぎているというか、お姉ちゃんとして張り切りすぎていて心配なんですけど?
母さんと悠人さんからは毎日テレビ電話がかかってくる。
『果歩も一樹くんも元気かい? 変わりはない? 困ったことがあったらすぐにパパたちに連絡しといで』
「大丈夫だよ、パパ。心配しないで。一樹くんと仲良くやっているから。橙子さん、パパが過剰に甘えていませんか? 突き放してもぜんぜん懲りないんで、パパに多少冷たくしても平気ですよ」
『ひどいなあ、果歩は〜。パパは果歩と離れてすごく寂しいのに』
『うふふっ。果歩ちゃん、悠人さんは寂しい寂しいって毎日言ってるのよ。一樹は問題ない?』
問題?
……あるっちゃあるけど、母さんには言わない。
だってこれは俺の気持ちの問題だから。
義理の姉ちゃんが可愛すぎる、なんならちょっと意識してっかもしれませんねとか言えっかよ。
俺、義理でも果歩と戸籍上は姉弟なんだよな。
「問題? なし」
『そう? 良かったぁ。仕事は順調だから思ったより早く日本に帰れるかもしれないわ』
「どうせ仕事がてら、新婚旅行気分で観光してんだろ?」
『ふふっ、まあね』
「良いじゃない、新婚さんだしね。あっ、お風呂が沸いたみたい。またね〜、パパ、橙子さん。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
『『おやすみ』』
今日も俺たちは二人で、イチャイチャな《《両親》》との会話を聞いてから、それぞれ風呂に入ったりあったかい飲み物を飲んだりして、気づけば夜が更けていく。
俺は果歩の姿を探す。
さっきキッチンで、明日の朝ごはんの支度をするって言ってたな。
「なあ、果歩? 俺ももっと家事とかやるからさ、あんまり根詰めてなんでも一人でやろうとすんなよ。……果歩? …果歩っ!」
俺はキッチンの床に倒れている果歩を見つけた。
「果歩! しっかりしろ。大丈夫か? どうした? どこか痛むか?」
とっさに倒れている人間を急に動かしたらいけないのを保健体育で習ったのを思い出して、俺は果歩に声をかけ続けた。
冷静になれ!
こういう時は焦っちゃだめた。
怪我はないか?
意識はあるか?
「果歩? 果歩」
熱があるような気がする。
意識はない。
果歩の体を横向きにして、脇に保冷剤をあててやる。
声をかけても何度呼んでも、果歩から返事はない。
……救急車を呼んだ方が良いかもしれない。
前に貧血で倒れた話は聞いたことがあった。
だめだ、俺。
無理させちまったんだ。
母さんが倒れた日を思い出して、血の気が引いてきた。
「果歩、今、救急車呼んでやるから死ぬなよ、頼む」
慣れない、子供二人だけの暮らし。
思った以上に果歩の負担になっていたかもしれない。
俺は自己嫌悪に陥っていくのを振り払った。
今は俺しか果歩を助けられないんだ。
「果歩。俺が助けてやるから」
穏やかに思えた日常が壊れるのは、些細な亀裂《できごと》からだ。
俺は果歩を……、失うわけにはいかない。
俺が果歩を守るって決めたんだ。