千秋先生は極甘彼氏。
_______誕生日、何かしたいことある?
柾哉さんに訊ねられたのは今から一ヶ月ほど前のことだ。
何かしたいこと、と言っても世間では普通の平日。できれば柾哉さんと一日中一緒に過ごしたいなあ、なんて淡い期待を持っていたけど、柾哉さんはいくつも訪問している企業がある。
難しいかな、と諦めていたけど、逆に柾哉さんは初めから私の誕生日は何も予定を入れるつもりはなかったと聞いて文字通り飛び上がって抱きついたのは記憶に新しい。
そしてちょうど私の誕生日が木曜で、金曜日と合わせて有給を取った。
柾哉さんも仕事の調整をしてくれて土日も合わせて4連休になる。
「果穂、誕生日おめでとう」
「ありがとう、柾哉さん」
前日の今日は美雨ちゃんと食事をした。柾哉さんに迎えにきてもらい、到着したのが今。自宅に着いて玄関の扉を開けた途端、柾哉さんがぎゅっと抱きしめてくれた。耳元で囁かれた祝いの言葉。好きな人に一番に祝ってもらえることが嬉しくて小躍りしそうになる。
好きな人に祝ってもらえる誕生日がこんなにも嬉しいなんて。
私は柾哉さんに出逢うまで知らなかった。
「えへへ。27歳になっちゃった」
「この一年も果穂にとってたくさん幸せでありますように」
酔っ払ったまま柾哉さんにぎゅうぎゅう抱きついて顔を上げる。
慈愛のこもった眼差しが落ちてきて頬をふにふにと撫でられた。
「柾哉さんがいてくれるだけで幸せ」
「俺も果穂と過ごす日々が幸せだよ」
「お酒くさいけどチューしていい?」
「いいよ」
彼のTシャツを掴んで背伸びする。見上げた瞳から溢れる想い。
表情が、視線が、全身で私を好きだと伝えてくれる。
「すき、柾哉さん。だいすき」
どれだけ伝えても伝えきれなくて、どれだけ示しても示し足りない。
重ねた唇の隙間に舌を差し込んだ。熱く弾力のある塊が私の舌を絡めとる。歯列をなぞり口蓋を撫で上げられて腰が震えた。唇の端から溢れ出る唾液をチュウ、と吸い上げる。
「酔っ払い果穂。早く風呂入ろう。いっぱい可愛がってあげるから」
「はあい」
それでも私は柾哉さんに甘えたくてぎゅうと腰に抱きついたまま彼に引きづられながらお風呂場に向かった。