千秋先生は極甘彼氏。

 それなら善は急げとばかりにまずはネットでリサーチした。
 韓国のネットショップは可愛いものも多い。でも配達に時間がかかりそうならやめておいた方がいいよね。

 「いくつかピックアップして試着できるならしたほうがいいんじゃない?」
 「そうだよね。あ、やっぱジェラピケ可愛い」
 「着心地いいしね」
 「美雨ちゃんもってるの?」
 「ふふふふふ〜♪」

 正直パジャマとか部屋着ってユニクロで十分だと思ってる。でもそれはもっと大人になっても着れるしそれなら今着たいものを着るべきだよね。

 「ちょっと高いけど買って正解だよ。もうパジャマ脱ぎたくないもん」
 「…買ってみようかな」
 「うんうん。一枚ぐらいあってもいいと思う」
 
 もちろん下着も新調しなきゃということで下着メーカーのネットショップをぐるぐると見回る。そして早速近々実物を見に行こうと意気込んでその日美雨ちゃんと別れた。

 『おかえり、果穂。楽しかった?』

 家に帰る前に千秋先生にはメッセージを入れていた。家に到着してすぐに電話を入れる。するとワンコールで出た彼は“おかえり”と出迎えてくれた。姿は見えないのにこの家のどこかにいる気がする。

 「はい!楽しかったです」
 『仲いいんだね』
 
 千秋先生は私のしょうもない話をいつも楽しそうに聞いてくれる。今日美雨ちゃんと話した内容は殆ど彼のことなのであまり具体的に報告はできないけど。

 『木曜楽しみだね。ちゃんと真面目に仕事してよ?』
 
 付き合って初めてオフィスで会う。というかまだあの日以来プライベートで会っていないから《《いつも通り》》のはずだ。

 「が、頑張ります」
 『頑張らなくていいよ。いつも通りテキパキ進行してくれればいいから』
 「テキパキしてますか?」
 『してるよ。随分会議回すのも上手くなったし』
 「本当ですか?!」
 『嘘言ってどうするの』

 クスクスと電話の向こうから笑い声が聞こえる。思わず唇を尖らせた私は決して悪くないと思う。

 『獅々原さんも評価してくれてるでしょう?直属のボスなんだって?』
 「あ、そうなんです。この間評価面談があって、この会社入って初めてたくさん褒めてもらいました」

 営業部で営業事務をしていた時はサポートして当たり前だと思われていた。一応感謝の言葉などはあるけど、数字がつくのは営業であまり目立つことはない。もちろんサポートがいないと営業は営業に集中できないので存在意義はあるけど、今みたいなやりがいを感じたことはなかった。

 『そう、よかったね。果穂が楽しそうに仕事をしてくれて嬉しいと獅々原さんもおっしゃってたよ。よくわからない仕事を投げているのに自分で色々調べて動いてくれて感謝してるって』

 「…そ、そんなことまでお二人で話されるんですか?」
 『うん。月一ぐらいでプライベートで飲みに行ったりするぐらいは仲良くさせてもらってるよ。大体いつも仕事の話になるけど果穂の話とかよく聞く。聞いてない?』
 「き、聞くわけないですよー!」

 その後、「私の話ってなんですか?と」と聞いても「それは秘密」とはぐらかされてしまった。気になって仕方ないのに最後は「獅々原さんに聞いて」とクスクス笑われて電話を切られた。「悪いことじゃない」と言うけどでもやっぱり気になるぅーーー。

 
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