千秋先生は極甘彼氏。

 「来週末って予定空いてたりする?」
 「空いてます!何かあっても無理にあけます!」

 食後のデザートを食べていると千秋先生からデートのお誘いが来た。
 来週末会える!しかも1日!!

 「無理にあけてくれるの?嬉しいけど付き合いもあるからその辺りは無理しなくていいよ」
 「もちろんです!」
 「うん。果穂は花とか好き?ここ行ったことある?」

 千秋先生が携帯の画面を見せてくれる。その時に肩とか腕とかがぴったりとくっついてアイスクリームの塊をごくりと飲み込んでしまった。

 「う」
 「大丈夫?」
 「だ、大丈夫です」
 「これ口つけてないお茶、飲んでいいよ」
 「すみません」

 喉の奥でアイスクリームは溶けて行ったけど頭がキーンとして慌ててお茶をいただいた。口の中に伝わる温かさにホッとする。

 「あ、話の続き」
 「うん。ここ、ひたちなかって茨城県なんだけど」
 「あ、知ってます!SNSで皆写真アップしてますよね」
 「そうそう。ドライブがてら行ってみる?」
 「いいんですか?」
 「よくなかったら誘ってないよ。ただ駐車場の兼ね合いで朝早く出たほうがいいみたいなんだ。都内からだと二時間ぐらいかかると思う」

 大丈夫?と聞かれて全力で頷いた。
 朝早くから千秋先生に会えるのなら5時でも4時でも頑張って起きる。

 「楽しみです」
 「俺も。来週学会あるから週末を楽しみに頑張れそう」
 「学会あるんですか?」
 「うん。今内容の最終確認中」
 
 触れ合った肩がさらに重みを増した。千秋先生の頭がちょこんと私の肩に乗っている。
 
 (つ、つむじ…!かわいいっ。撫でたい…っ)

 「ま、柾哉さん」
 「ん?」
 「触っていいですか?」
 「ん?どうぞ?ワックスしてるけど」

 失礼しまーす、と肩に乗った頭にちょんと触れる。
 確かにワックスで固めているので犬を撫でるようには撫でられなかったけど、いつも頑張っている彼がもっと頑張れますようにと優しく頭を撫でる。
 
 「がんばってください。いつもの千秋先生らしく」
 「頑張るからご褒美くれる?」
 「いいですよ。何がいいですか?」

 下から見上げる瞳が溶けそうなほど甘く微笑んだ。
 ふわっと笑う声が弾む。

 「選ばせてくれるの?」
 「はい。って何がご褒美になるかわからないです」
 「果穂からのアクションはなんでもご褒美だけど。じゃあ考えとく」
 「あれ?今聞かせてくれないんですか?」
 「いっぱいありすぎてすぐには選べない」

 千秋先生が困ったように笑う。

 そして「うーん」と頭を上げるとぐるりと首を回した。
 
 「よし帰ろうか」

 綺麗に食べ終わったデザートの皿を見た彼は時刻を確認するとゆっくりと席を立ったのだった。

 
< 25 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop