千秋先生は極甘彼氏。

 
 「つまり果穂にとって俺が初めての相手でしょう?」
 
 すごく婉曲したけど間違ってはない。
 だって先っぽだけ挿いるのは実質入ってないのと同じだ(それでいい)

 「…うん」
 「言いにくいこと言わせてごめんな」
 「ううん。いいの」
 
 そろりとベッドに押し倒されて溶けそうなほど甘い眼差しに見つめられる。その甘さの奥に見えた喜びと独占欲を感じさせる言葉に今度は私の心が喜んだ。

 「この先もずっと俺だけの可愛い果穂でいて?」
 
 千秋先生の唇が瞼に唇に落ちてくる。返事をしたいのに「今はまだ」と言われている気もしてドキドキしたまま彼を見上げた。 
 
 「俺だけにしかそんな姿見せないで」
 「…はい、私は柾哉さんのものです」
 「うん。約束ーーーーーーー」

 甘く滴る下腹部に千秋先生の熱が押し入ってきた。痛くて苦しくて悲しい記憶が今は悦びの感情で溢れている。

 「果穂」

 彼に呼ばれるたびに身体の奥が蕩けていく。甘やかされるままに受け入れるキスが思考を奪い言葉を溶かしていく。もう何も考えられないはずなのに、ただ千秋先生への想いが増すばかり。苦しくて切なくてそれ以上に愛おしい。

 「果穂」

 私の中に仕舞い込んだ彼が蠢くたびに苦しそうに耐える彼が可愛くて。ただ受け入れただけなのにこんなにも悦びを伝えてくれる。視線ひとつが愛を伝えてくれる。身体の動きも腕の位置もすべて私の負担にならないように気遣ってくれているとわかるぐらい大切に大切に彼は私を抱いた。

 「っ、かほっ、もう」

 さっきから何度も何度も私が彼を絞り込む。自分でもわかるほどキツく彼を抱きしめて「出て行かないで」と待ったをかけた。

 「だ、め、」
 「果穂、」
 「もうすこし、いて?」
 「ドエスか」
 「だって」

 泣きたくなるほど“愛しい”が溢れている。

 もう少しだけ、もう少しだけ。
 この幸せに浸っていたい。

 「ごめん。無理」
 「ぁ、まっ…っ」

 まって、おわらないで。
 
 「やっ、」
 「果穂」

 それでも彼は宥めるように私の名前を呼んで腰を揺らしはじめた。

 最奥に押し付けられるたびに脳が揺れる。決して激しくされているわけじゃない。むしろこんな時でも彼は私の様子を窺いながら熱を吐き出すタイミングを見計らってくれていた。

 「ぁ、ああっ、柾哉さん…っ」

 その思い遣りがうれしくて。優しすぎる彼をもっと好きになる。汗ばんだ背中をキツく抱きしめれば私の中にいる彼の喜びが伝わった。

 「…っ、ぁあ」
 「果穂っ」
 「ぁ、や、まっ」

 彼の切羽詰まった声に首を横に振る。
 (だめ、まって…っ)

 それでも何度目かの火花が脳内で散る。彼にグッと抱え込まれてそれが終わりを告げる合図だと気づいて力を抜いた。

 「…っ、はぁ、はぁっ」

 息も絶え絶えになった私に折り重なるように彼の身体が落ちてくる。

 嬉しくて可愛くてそれなのにちょっぴり切なくて自分よりも大きな彼をぎゅうと抱きしめながらその気持ちを誤魔化した。

 

 
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