千秋先生は極甘彼氏。
(…まだ私の中に柾哉さんがいる)
さっきまでの甘く乱れた一時の余韻に浸っていると下着だけ身につけた柾哉さんに後ろから抱きしめられた。振り返れば甘く微笑む彼と目が合う。顎を突き上げて下唇をさし出せば彼は笑いながらキスをくれた。
「まだ足りない?」
「…柾哉さんは足りてるの?」
「まさか。まだ半分ぐらいしか満たされてないよ」
それは全然満たされてないのではないか。
思わずガッカリとした私に柾哉さんが苦笑する。
「違う違う。果穂が想像以上にいやらしくて可愛かったからもっと甘やかしたくて仕方ないだけ」
「…これ以上甘やかされるとダメ人間になりそう」
彼はくすくす笑いながらまたキスをくれる。だけどそれはさっきまでのいやらしいものじゃなくて小さな子どもを宥めるようなあやすようなキスだ。
「…ダメ人間になっていいよ。俺なしじゃいられないようにしてあげる」
「……もう、手遅れです」
「俺の方が手遅れだよ。多分一生離してやれない自信あるよ」
控えめな声に混じる独占欲。せっかく落ち着いた胸の高鳴りがまたぶり返した。
「…離さなくていいです。だって、私は柾哉さんのものだから」
たとえ柾哉さんが詐欺師でも犯罪組織の一員でも私は一生彼に溺れていると思う。
「……よくもまあ悪い男に引っ掛からなかったね」
「柾哉さんに引っかかりました」
「俺、悪い男なの?」
耳を甘噛みされた。そのくすぐったさに笑いながら身を捩る。
「いつも私のこと甘やかすから」
「可愛いから仕方ないよ」
「柾哉さんは私を甘やかす天才です」
「嬉しいね、それは」
どちらからともなく唇を合わせる。離れてしまう温度が名残惜しくて唇の先を見つめていた。
「…キリがないな」
「…はい」
「もう欲しくてたまらない」
「……私も、です」
近づく顔が何かを探るように見つめている。その瞳に微笑んで自分から唇を押し付けた。柾哉さんがよいしょ、と身体を起こす。見上げた彼の瞳には欲情した灯が再びほんのりと色づいた。
「本当、煽りの天才」
「…えへへ♡」
「えへへ♡じゃないから」
眠る時間が惜しい。それならずっと柾哉さんと身体を重ねていたかった。
抱きしめられてキスされてたくさん触れ合いたい。
______果穂、
だけど朝早くから起きて緊張して解けた身体は自分が思っていたより疲れていたみたいだ。遠くの方で柾哉さんの声がして何か返した気がするけどその先は覚えてない。