千秋先生は極甘彼氏。
(お腹空いた)
くぅ、と腹の虫が音を上げた。
そんな私を見て柾哉さんがくすくすと笑っている。
「お腹空いた?」
「はい」
「出かけるのは難しいね」
「…う、すみません」
「全然。何かあったかな」
柾哉さんがソファーから立ち上がると冷蔵庫の扉を開けて何かを探していた。もしかして何か作ってくれるのかな、とドキドキしながらその姿を眺める。
「パスタでもいい?」
「なんでも好きです」
「そう。その代わり夜はしっかり食べよう」
はい、と頷けば優しい眼差しが帰ってきて嬉しくなる。
「何か手伝います?」
「果穂は敬語を直そうね」
「…う、が、頑張る」
「200回俺にキスだよ」
「に、ひゃく…!ってまだ続いてたの?!」
「お。いいツッコミ」
カジュアルなネイビーのシャツにベージュのパンツ。
髪は何もセットしていないせいかとても幼く見える。
私の彼氏が今日もかっこいいです…///(惚気)
「…いい匂いする。クリームパスタ?」
我慢できなくなってヨタヨタとキッチンを覗き込む。
「歩ける?」
「なんとか」
「まあリハビリが大事だな」
火に近づかないように歩くならいいよ、と柾哉さんに言われて私はギクシャクとしながら部屋の中をうろうろとするのだった。
「コーンスープ?!」
柾哉さんが作ってくれたパスタはカルボナーラ。「生クリームを常備してるって女子力高すぎ」と突っ込んだらまさかの答えにこっちが驚いた。これなら「生クリームを常備している」方がまだいい。
「コーンスープでこの味できるの?」
「簡単だよ」
「ええええ」
主婦もびっくりだよ、こんなの。
とほほと嘆いていると柾哉さんに追い討ちをかけられた。
「美味くてごめんね?」
「美味しいは正義です!」
黒胡椒たっぷりでベーコンもふんだんに使われてる。サラダもあるしインスタントのコンソメスープも付けてくれた。
「それより、私のために作ってくれたことが嬉しい…!」
「フフフ。それはよかった」
「…また作ってくれる?」
下手なパスタやさんにいくよりも十分美味しい。それなら柾哉さんに作ってもらいたい。彼の顔を見ながら食べるだけで旨さ5割増しだし。
「いつでも。果穂のためなら」
「やった♡」
わーいわーいと喜んでいると耳にかけた髪が落ちてきた。
その髪を柾哉さんの手が掬ってくれる。