BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー

「私、たまに宝生さんが登校してくるの見たことあるよ。超でかくてピカピカの車に乗ってるの。さすがお嬢様だよね」

「えー、そうなんだ。いいなあ」


巻髪の子が興奮気味に言えば、ピアスの子がうっとりした目を向けてくる。


父の言いつけで、私は車登校。


朝は校門前まで車で乗り付けて、帰りも校門前から車に乗り込んで帰る生活。


だから特進科の生徒以外と接触する機会はないし、もっと言えばクラスの人以外との交流はない。


普通の高校に私がいることはよっぽど珍しいらしく、入学当初は動物園のパンダのように入れ替わり立ち替わり私を見に来る人が絶えなかった。


2学期に入って、ようやくそれもひと段落したところ。


「妃翠ちゃんって案外普通なんだね」

「ねー、良かったぁ」


顔をほころばせる彼女たちは、顔を見合せてほっとしたように言うけど。
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