BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー
しばらくすると誰も歌わなくなり、メインはトークに移る。
私は間が持たなくて、さっきからドリンクバーを行ったり来たり。
誰としゃべるわけでもなく、面白くもない画面の広告をぼーっと目に入れていた。
やっぱり私には、みんなの普通は無理なんだ……。
特殊な環境で育ったせいで、普通から遠ざかってしまっていることを再認識させられて、気持ちが重くなるばかり。
宝生の家になんて生まれたくなかった。
私なんて、生まれなきゃよかった……。
普通を体感すればするほど、自分がみじめになっていく。
この普通も、自分で望んだことなのに……。
「妃翠ちゃん、なんか落ち着かない?」
「えっ」