BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー
爽やかだと思ったそれは作り物だったのか、口元が不敵に上がり、目の奥がぎらぎらと光り出す。
「俺さ、今日会った瞬間から妃翠ちゃんが一番可愛いと思ってたんだよね」
甘い言葉を吐く彼は、だんだん距離を詰めてきて。
「この後さ、ふたりで抜けない?」
耳元でささやくと、肩に手を回してきた。
ゾクリ、と悪寒が走る。
「妃翠ちゃんって、見かけによらず純情なんだね。もしかしてまだケイケンなかったりする?」
気持ち悪い。
「心配しないでいいよ。俺、初めてのコにはすっごい優しくするから」
やだ。
「今から抜けて、ふたりで──」
「やめてっ……!」
気づいたら、突き飛ばしていた。
はずみで彼のグラスは倒れ、ウーロン茶が机の上に広がっていく。