BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー
なにしてるの?
そんなことしてないで、さっさと身代金の要求とかするんじゃないの?
うちの父なら、1億だろうが2億だろうがすぐに用意するにきまってる。
「……あの」
思い切って声を出すと、男たちは一斉にこっちを見た。
「あ?」
お湯を沸かしていた男の不機嫌そうな声に、一瞬ひるむけれど。
「その……電話……かけないんですか?」
「電話?」
「……身代金の要求……とか」
そう言うと、全員の動きが一瞬止まり。
赤髪の男が「ははっ」と笑い出した。
……なに?
何がそんなにおかしいのか私にはまったくわからない。
「しないしない、そんなの。なあ?」
彼が同意を求めた先は、指や手首、耳や唇までにもピアスなどのシルバーが無数につけられている男。
「しないな」
当たり前のように言われ、ますますわからない。