BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー
「そうなの?」
「そうだよ」
「だけど荷物も置いて突然消えて……っ」
母は、まだ私が返ってきたことが信じられないかのように、体をぺたぺた触りまくる。
カラオケから回収してきたのか、私のカバンはリビングにあった。
「カラオケが退屈すぎて、こっそり抜け出しちゃったの」
一瞬、メロンソーダの海が頭をよぎったけれど、ここは貫かないと。
「だったら連絡くらい……」
「スマホ、カバンの中に入れっぱなしで」
「あら、そうだったの」
あっさり信じる母。
スマホを置いて帰ろうとする女子高生がいないことを、不思議に思わないくらい天然でよかった。
「本当になにもなかったんですか?」
近づいてきたのは、黒いスーツを着た無骨そうな刑事。