BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー

「そうなの?」

「そうだよ」

「だけど荷物も置いて突然消えて……っ」


母は、まだ私が返ってきたことが信じられないかのように、体をぺたぺた触りまくる。


カラオケから回収してきたのか、私のカバンはリビングにあった。


「カラオケが退屈すぎて、こっそり抜け出しちゃったの」


一瞬、メロンソーダの海が頭をよぎったけれど、ここは貫かないと。


「だったら連絡くらい……」

「スマホ、カバンの中に入れっぱなしで」

「あら、そうだったの」


あっさり信じる母。

スマホを置いて帰ろうとする女子高生がいないことを、不思議に思わないくらい天然でよかった。


「本当になにもなかったんですか?」


近づいてきたのは、黒いスーツを着た無骨そうな刑事。
< 63 / 134 >

この作品をシェア

pagetop