BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー
「事件性がなさそうなので、我々はこれで」
聴取が終わると、刑事たちはあっという間に機材を片付けて撤収していった。
警察側も、父に内密で捜査している手前、何もなかったならそれに越したことはないのだろう。
必要以上に疑ってかかって来なかったのも、私の無事が一番の任務だったからなのかもしれない。
怪しまれなくてよかったと、心底ほっとした。
「もうっ、妃翠ってば! だからカラオケなんて行くんじゃないって言ったのにぃ~」
静かになったリビングで、母がぺしぺしと体をたたいてくる。
カラオケになど行ったことのない母は、あんなところ野蛮な人間の行くところなんじゃないの?と眉をひそめていた。
こちらはこちらで世間知らずで、この母にして私あり、なのだ。