BLUE ROSE ー今夜、私を攫ってー
人前に出れば、物珍しそうに見られることがある。
それが嫌だから不用意に人だかりには顔を出さないようにしていたのに、うっかりしてた。
「あー、お嬢様の?」
……そう言われるのが一番イヤ。
全然お嬢様らしくもないのにそんな呼称、似合わないのは分かってる。
みんなが思い描くお嬢様というのは──
「麻美ちゃんっ!」
「わっ、愛理ちゃんだぁ、久しぶりー!」
ほら、ああいう子を言うんだと思う。
麻美に話しかけてきたのは、入学当初、"宝生家のお嬢様"と間違えられていた女の子。
おしとやかな上に上品なほほ笑みを見せる彼女に、誰もがそうだと疑わなかった。
姿勢が良く、腰付近まで伸びた髪の毛先はきれいにカールされていて、嫌味のない程度に施されたメイクは、自然なのに思わず目を奪われるほど品があって。