やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

34

「おはよう! もう昼だけどね」


 一昨日の夜の、あのお別れが無かったかのように、明るく挨拶をするシドニー。
 この愛想の良さは、本来の彼ではない。

 クールなシドニー・ハイパーは自分から挨拶をしない男。
 声をかけられて身内だと分かれば、初めて挨拶を返す。
 ……やはり、外面のいいモニカとの愛は、彼を変えた。


「今頃、起きたのか?」

「……モニカは何処です?」

「俺、ひとり。
 モニカはノックスヒルに残されてる」

「……」


 急いでドアを閉めようとした。
 シドニー・ハイパーとは一昨日で終了したが、3年以上後輩として親しくしていた。
 大学への通学を見越してムーアの祖父が紹介してくれて、高等学院卒業前に借りたこの部屋に、シドニーを招いたことはないし、部屋番号も教えたことはなかった。

 ここ知ってたの?と、質問しそうになって、
ああモニカか、と納得した。
 私が留守の時、シドニーはモニカに会いに、この部屋を出入りしていたんだ、と。
< 107 / 444 >

この作品をシェア

pagetop