やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

 多分、モニカは私を悪者にしたいのだろう。
 勝手にしたらいい。
 信じないけど、と言いながらもモニカを支えたいシドニー。


 どんなに辛い目に合わされても、それに負けない清く正しく心優しいヒロインはモニカ。
 そんなヒロインを妬んで苛めて。
 高貴な彼女を不幸な境遇から助けたいヒーローとの間を裂こうとあれこれ企むのが、元は平民の下品な私、かな。


 悪者から守ってほしいお姫様と、守りたいナイト。
 私の居ないところで、使い古した設定の茶番劇を続けたらいいわ。


「私、帰るね。
 その方がいいわね。
 ウチの両親には余計な連絡はしないから」

「逃げるの?ジェリー!」

 自分はシドニーの腕の中で守って貰っているくせに、モニカが私に叫ぶ。


「モニカも、もういいだろ?」

「でも、シド、ジェリーの言ったことは許せないわ!」

「モニカ、もう黙って!」


 事を大きくしたい、他の人に聞かせたいモニカの声が大きくて、どんどんキッチンに皆が集まりだして、シドニーがさすがにモニカを嗜めた。


 ここはシドニーが大学通学のために友人と借りているシェアハウスだ。
 彼の婚約者になったモニカにとって、ここはホームで。
 シドニーの誕生日パーティーに集まってくれた知人達は全員が自分の味方だと思っている。

 自分の両親の死について、私から。
 こんなにも酷いことを言われたから、こんなにも自分は傷つけられたのだ、と他の人にも知って貰いたいのだろう。
 ふたりに向けて熱くなっていた頭と心の芯が、どんどん冷えていくのを感じた。
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