やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 縋るつもりはなかったけれど、オルの気持ちが知りたくて彼の視線をとらえようとした。
 だけど金色の瞳は、その視線に気付いても私を見ない。


 フィリップスさんに名前を知られて、調べられても平気なのは、今の魔法庁の記録に自分の名前がないからだ。
 『今』のオルは13歳。
 魔法学院の生徒だと突き止められても、実際のオルはフィリップスさんの知る狼じゃない。

 ……それに、直ぐにここから立ち去って……
居なくなってしまうから。




「明日、またこちらに伺わせていただきます。
 その時、まだ彼が居たら。
 分かりますね?」

 フィリップスさんが私に言いたいことは分かった。
 明日ちゃんとオルが姿を消していたら、祖父には報告しない、と彼は言ってくれている。


「私は帰ります。
 ノックスヒルのお母様が貴女をご心配されています。
 電話をして差し上げてください」

「夜に電話を掛けるつもりでした。
 でも、もう母はそんなことは気にしないかも」


 長距離電話は早朝、夜間、日中の順で料金が安い。
 余程の急用でもない限り、ウチに電話を掛けるのは早朝か夜間にするように、と母から言われていた。
 小さいことの積み重ねが大きくなる、らしい。
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