やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

 ムーアの邸を訪れた私を迎え入れてくれたのは、祖父の右腕のアーネストさんだ。


「お嬢さん、お忘れ物でもありましたか?」

 そうアーネストさんに尋ねられて、私が最近この邸を訪れていたらしい、と分かった。
 前回の訪問と日を開けずに来たから、若干戸惑っているようだ。
 16歳の私が今日の午前中まで何をしていたのか、わからないから本当に心臓に悪い。

 これはいつか、オルに会えたら文句を言ってやらねば!と、ささやかな楽しみにしておく。


 多忙な祖父は今日も訪問客があるらしく、その合間の休憩時間を私に当ててくださるようで、第3応接室で祖父を待つように告げられた。

 第3応接室には、2年後の祖父の誕生祝いの集まりで、従兄の小さな息子ウィルが壊した花瓶も無事な姿で飾られている。
 お茶をいただきながらそれを見て、改めて自分が時を戻ってきたのだと実感した。
 そして、この待ち時間の間に、どう話を進めようかと考えた。


 いくら祖父が私を可愛がっていたとしても、それは言うことなら何でも聞く様な盲目的な愛情ではない。
 祖父なら必ず、その証を求める……
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